八月十五日。

 夏の暑さはこれから本番を迎える、とインターネットの天気予報は伝えていた。

「……外に出なきゃいけないな」

 今日もいつものように如月伸太朗という人間は呟いてパソコンの画面を眺めていた。

「ご主人、つまらなくないですか? こう毎日とパソコン……。飽きないんですか?」

「パソコンに居るお前に言われたかないね」

「……私は、パソコンがテリトリーなんですよ!」

「へぇ、じゃあ主食は?」

「ハードディスクのメモリーですかね?」

 パソコンの中にいつからか住み着いたソフトウェア(?)、エネは今日もディスプレイを自由自在に走り回っていた。

「……あれ、そういえば……今日買い物に行くって言ってませんでしたっけ?」

「あぁ……解っているよ。もう行けばいいだろ」

 そう言うと伸太朗はスマートフォンを取り出して、イヤホンを装着する。エネもそれを見てスマートフォンに自らのデータをインポートした。





《ロスタイムメモリー 1【自己解釈】》







 夏は暑い。

 当たり前なことではあるが、八月十五日という日(つまり今日)は午前九時の時点で猛暑日を気象庁が発表するほどの暑さだった。

 そんな町並みを赤ジャージの如月伸太朗は歩いていた。

 当たり前だが、保険証は持参している。「いつでも倒れても身元も判明するし病院行けるし一石二鳥だね!」と彼の妹である如月桃が言ったためである。

「ほんとに今日は暑いですね~……。あんまりスマートフォンって中にある暑い空気のためにファンなんて付いてないんですよね……」

「つまり?」

「ノートパソコンを今度から持ち歩いてくださいね!」

「アホか! そんな余裕ないんだよ!」

 ぎゃーこらぎゃーこらと、伸太朗とエネはぐだぐだ駄弁りながら坂に差し掛かったところだった。

 伸太朗は立ち止まり、坂の上を見た。

 そこには一人の少女が居た。

 カゲロウのように、ゆらゆらと浮いていた。


「アヤノ……!」


 彼女は、彼が知る数少ない人間のひとりだった。







 そして彼は――あの夏の記憶を思い出す。



つづく。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

ロスタイムメモリー【自己解釈】

http://www.nicovideo.jp/watch/sm20470051

そういえば1stアルバム「メカクシティデイズ」の最初ってなんだったっけ。

…あ、「ロスタイムプロローグ」だ。

……ロスタイム?

かぶっている……?

ま、まさかねハハ……



――

かかせていただきました。

閲覧数:955

投稿日:2013/03/31 17:32:23

文字数:910文字

カテゴリ:小説

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