雅彦は家を出て、歩き始めた。いつもの街角、いつもの商店街、いつもと変わらない行き交う人々。いつもと変わらぬ日常である。雅彦はそんな街中を見ながらいつもと変わらぬペースで歩いていた。
 そして歩いているうちに雅彦が働いている大学に着いた。大山北大学。日本におけるアンドロイド開発の総本山ともいる大学であり、世界のアンドロイド開発においても重要な役割を担っている。雅彦はこの大学で長年教授として働いていた。彼は大山北大学に入学後、そのまま進学し、教授への道を歩んでいた。研究しているのは主にアンドロイドについてだが、研究の一分野としてアンドロイドの一種別であるボーカロイドも取り扱っており、その関係でボーカロイドの研究、開発、メンテナンスも引き受けていた。世間に出回っているボーカロイドの開発にも協力しており、さらにそのボーカロイドの中でも雅彦と共に暮らしている特殊な改修を施した特殊仕様のボーカロイドとの関わりも深い。世界的スターでもあるボーカロイドに直接接し、さらにはメンテナンスなどができるとあって、雅彦の研究室は大山北大学の中でも一、二を争う人気の研究室である。
 雅彦が自分の部屋が入っている棟に入ると、何人かの教授が雅彦に挨拶してきた。返事を返しながら自分の部屋へ向かう。自分の部屋に着くと、リュックを机に置き、電気ケトルに水を入れ、お湯を沸かし始めた。その合間にPCを起動し、メールチェックを始める。今朝は特に急を要するメールはなさそうだった。メールをチェックしているうちにお湯がわく。雅彦はドリッパーにフィルターを入れ、その中に砕いたコーヒー豆を入れる。そしてわかした湯を注ぎ入れる。湯が完全にサーバーに落ちるまで待ち、サーバーからマイカップにコーヒーを淹れ、クリームを入れる。そして一口飲んで味見をする。雅彦はいつもと変わらぬ味に満足しながら席に戻ってメールチェックを続けた。
 ひととおりメールチェックが完了すると、今度はスケジュール管理アプリケーションを起動し、今日の予定を確認する。今日は朝の定例ミーティングの他にいくつか雅彦の受け持つ授業がある位である。スケジュールのチェックも終わった雅彦はゆっくりコーヒーを飲んでいた。雅彦はこの一人になれる時間帯が好きだった。家族と一緒にいる時間も好きだが、こうやって仕事の前、一人きりになる時間も良さがある。コーヒーを飲み終えると時計を見る。そろそろ教授が集まっての朝の定例ミーティングの時間だった。雅彦は流しにコーヒーカップを起き、部屋を出て行った。

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初音ミクとパラダイムシフト3 1章2節

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投稿日:2017/02/26 16:08:19

文字数:1,058文字

カテゴリ:小説

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