Sof Lo,juwol. Zot Lo,juwol.
最愛の人 たった一人の人
目の前には、1目見てからずっと会いたいと思っていた歌姫がいる。彼女は、あのときと同じように、私にお辞儀をする。
「わざわざ私のために……」
歌っている時の声しか知らなかったが、こうして普通に喋る声はかわいらしくて。ちょっと声が小さいかな、と思ったが緊張しているのだろう。歌を歌う時に現れていたすこしかすれた声も健在だった。
決まり文句の言葉から始まって、最初こそ堅苦しい会話が続いていたが、だんだんと普段する会話と変わらなくなっていた。敬語は最初からしなくてもいいと言っているので、それも緊張を解く要因の1つになっているのかもしれない。
ただ、話していると時折、咳をしているのが気になって。何度目かの時に聞いてみた。忙しいらしかったし、無理をして会って貰っていたなら、それは嬉しくない。
「結構、咳出てるけど大丈夫?」
「あぁ、それは……。」
気まずそうな顔をさせてしまった。あまり、話したくない事なのだろうか。知りたいと思う反面、そんな顔をさせたくないとも思う。どちらの考えを優先しようかと悩んでいたら、相手の方が先に決断をしていたみたいだった。情けない。
「病気……だから。治すのがとても難しいみたいで。放っておいてもどんどん進行していくから……。」
「もしかして、そのかすれた声も……?」
無言で頷く彼女。
笑顔が少ないのはそういう性格だからとかではなく、苦しさをこらえていて? 少し細いその声は、病気で元気が削られていたから?
なんという………。
「ごめんなさい。やっぱり、こんな話、しなかった方がいいですよね。」
気まずそうに頭を下げられる。そんな顔、やっぱり見たくなんかないんだ。
付き添いで来ていた兵が、時間切れを告げる。この、重たくなってしまった空気で出て行けというのか……。
「……また、会いに来ていいかな。その時までに、何か方法を見つけておく。」
そう言うのが、精一杯だった。でも、その言葉に嘘はない。
Sof Lo,juwol. Zot Lo,juwol.
最愛の人 たった一人の人
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或る詩謡い人形の記録 5 -賢帝の愛玩-
※この小説は青磁(即興電P)様の或る詩謡い人形の記録(http://tokusa.lix.jp/vocalo/menu.htm)を題材にした小説です。
ヤリタイホーダイ(http://blog.livedoor.jp/the_atogaki/)というブログでも同じものが公開されています。
こちらの方が多少公開が早いです。
始 http://piapro.jp/content/0ro2gtkntudm2ea8
前 http://piapro.jp/t/xhHk
次 http://piapro.jp/t/FLPO
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