チーン
今度はあまり時間の立たないうちに、エレヴェーターが停止した。扉が開くと、さっきとは違う風景が広がっていた。でも、私は先ほどのショックのせいか疲れた表情でゆっくりと顔を上げた。
今度はどこかの都会にこのエレヴェーターは止まっていた。しかも空中に…
私はこの街を見下ろすような位置にいた。かなりの距離があるにも関わらず、ここまで聞こえてくる騒音に私は思わず顔をしかめた。
私の周りには広告を吊るした飛行船や浮遊車の駆け出しのようなものが飛んでいる。
私はエキビジョンを見ている一人の若者に目を止めた。人がひっきりなしに行きかう中でなぜ彼に興味がいったのかは分からないが、なんとなくあの歌を歌っていた少年が成長したらこんな風になるのかなとおじいさんのようなことを考えている自分がいた。そういえば私は何歳なんだろう?このエレヴェータに乗る前のことはどうしても思い出せないのだ。
「これをおかけになってください。」
私が眼下に広がる世界を眺め物思いにふけっていると、エレベーターガールがメガネの様な物を私に押し付け、また元の位置へと戻っていった。これは何かと聞いてみたが、案の定答えは返ってこなかった。それをかければ分かるととった私はその眼鏡をかけた。
すると、私の周りに文字が溢れた。
「ごめん…ちょっと遅れる(≧~≦)」
「先日の商談の件ですが…」
「今日何時になる?」
「HAPPY BIRTHDAY!」
「おはこんばんにちは…」
「ウザいんだよね、あいつ…」
「ウケる、マジ(≧ξ≦)」
「キモイんだよ!師ねww」
私は眼鏡を外した。眼鏡の縁には電波眼鏡(電波を可視化する眼鏡)と書かれていた。これが、この世界?僕はもう一度眼下を見渡した。さっきは気づかなかったが、皆一様に下を向き指を盛んに動かしている…
私は目をそらし、昨日聞いた無垢な歌を心底懐かしく思うと共に、歌を忘れたこの世界を哀れにも思った。その時、ふと横を見た私の目に信じられない光景が飛び込んできた。一人の青い髪の少女が、エレヴェーターとほぼ同じ高さのビルの上から街を見下ろしているのだ…身一つで……
「あ、危ない!!」
私は驚くと同時に少女に警告した。すると、少女はこちらを向きはにかんだのだ。
「よかった!まだこの世界にも歌を忘れてない人がいたのね……?あら、そう。あなたは、違うのね…」
少女のうれしそうな表情は一瞬で失望と落胆に変わった。
「どういう…」
私が問いかけると、少女は再び目を下に向けた。
「いずれ分かる時が くるだろ」
「えっ!?」
小さくそうつぶやいた少女は、私がその言葉の意味を聞く前にすうっと消えてしまった。
この世界の太陽も沈みだしていた。
また私は起きたまま夜を明かすことになったのだが、この街は夜になっても全く明かりが消える気配が無い。結局一晩中明かりはついたままだった。
翌朝、昨日となんら変わらない街中で、エキビジョンだけがなんだか騒がしい。周りの人は自分のことしか見えていないのかほとんど気にしてない。それでもあまりにエキビジョンがやかましかったのか、徐々に立ち止まる人が増えてきた。そしてなぜかエレヴェーターの上の辺りを指差している。
私も上を向くとなんと空からミサイルが降ってきていた。しかも、飛び切り大きく描かれたあのマークは核爆弾だ!!
「…あっ!!」
その時、なぜかミサイルがあの青い髪の少女とダブった。そのまま少女は落ちていった。街へ…それに合わせて、私も視線を下げていくとそこに昨日の若者がいた。振り向いた彼の目にミサイルが映る。
私はここが空中なのも忘れて走り出した。しかし…
「飢えへまいります…」
エレベーターガールの言葉でまたしても扉は閉まり。エレヴェーターは飢えへ飢えへと進んでいく。
私は留まりたかった、たぶんあの少年も、若者も留まりたかっただろう。それでも飢えへと登り続ける。
うっすらとあの青い髪の少女の声が聞こえる。
「Sie sind arm(哀れだ!)Liede und Friden(愛と平和)もしもこの歌を歌ってる人がいたのなら……」
私は耐え切れなくなり、唯一の仲介者にしがみつき問いかけた。
「なぜ苦しいものを見せ続けるのですか?」
エレベーターガールいわく…
『あなたの生き様と大差は無いのでしょう?』
終末史episode3―新世紀②―
囚人Pさんの楽曲新世紀(http://piapro.jp/t/_XAE)(http://www.nicovideo.jp/watch/sm6723010
)の二次創作小説です。レン視点。
これを自己解釈と呼ばずになにをそう呼ぶ!っ的な感じで書いてます。
続きはこちら(http://piapro.jp/t/b4Kr)
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裏方くろ子
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