タグ:リトル・オーガスタの箱庭
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7.失われた日々へ
私はまるで、焼け野原に立っているような気持ちでした。そこへ放り出されたのは一瞬のことです。
黒く巨大な怪物のごとき圧力と重低音が目の前の空間をねじり取るように横切り、クラッシュ。光が水袋をわったようにバッとはじけて、頭と体をぐらぐらと激しくゆさぶりました。
それがおさまり、...【小説】リトル・オーガスタの箱庭(7)
Rusha
6.孤独の戦い
マスターが作った次の曲は、エレキギターと私の競演によるロックでした。彼は物静かで穏やかな気性ですが、学生の頃からロックのとりこなのだそうです。
マスターは打ち込んだエレキギターの音と私の歌声を何度も調整しながら、それぞれがもっとも良く響き合い、魅力を引き出し合うメロディを作り上げ...【小説】リトル・オーガスタの箱庭(6)
Rusha
5.見えない音の世界で
先日作った曲には、結局歌詞はつけられませんでした。
とは言うものの、具体的な意味を持つ言葉が使われなかったというだけで、もちろん私の歌声は入っています。マスターは、曲に一番合った私――初音ミクの発声と音を探してそれを伴奏に乗せたのでした。
きっと初めて耳にした人は驚くで...【小説】リトル・オーガスタの箱庭(5)
Rusha
これは、拙作『リトル・オーガスタの箱庭』http://piapro.jp/t/BkVq のための設定メモです。
SFテイストで特殊な用語や独自設定があるので、少しまとめてみました。
随時増えます。
■主な登場人物■
初音ミク:語り手。機械の体を持つVOCALOIDです。
機械なので人間の女の子より...小説設定メモ
Rusha
4.KAITO
マスターの仕事の帰りに片目の猫を拾った私たちは、その足で一番近くにある獣医の下へ行き、そこでできる限りの治療をしてもらったあと、薬をもらい、ペット用品を扱っている店でトイレ用の砂やら子猫用のご飯やら、当面必要と思われるものを買いこんで家に帰りました。
荷物を持つのはカイトの役目で...【小説】リトル・オーガスタの箱庭(4)
Rusha
3.楽器屋と猫
曲が完成した翌日、私はマスターの調律の仕事に同行しました。向かった先は隣町に住む、昔からのマスターの友人だという楽器屋さんの家です。お店には売り物のピアノは一つもなくて、おじいさんや、その前の世代からずっと大事にされている、お友達が個人で所有している自宅のピアノの調律をするのだとマ...【小説】リトル・オーガスタの箱庭(3)
Rusha
2.手を取って、鼻歌でワルツを
「ねえ、マスター。この写真、マスターの家族?」
窓辺にひっそりと置かれている写真立てをのぞきこみながら私が言うと、マスターはぴたりと手を止めてピアノから顔を上げました。
彼の奏でるピアノの音色は電子楽器の自動再生では決して出せないような、とびきり美しいものです。だ...【小説】リトル・オーガスタの箱庭(2)
Rusha
街へ出かけた帰り、何年も何十年も踏みしめてきた道をカイトと一緒に歩いていると、ふいに誰かに呼ばれた気がして私はその場に立ち止まった。地面に落ちた夕暮れの長い影が一瞬だけゆれて、私とそっくり同じに動きを止める。
「ミク?」
昔からの習慣で私よりも一歩先を歩いていたカイトが私の名前を呼んでふり返った...【小説】リトル・オーガスタの箱庭(1)
Rusha