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小説版 Re:present パート9(最終話)
卒業式だ。
まだ、雪は解けてはいない。雪解けまではまだ一カ月は待たなければならないことが北海道の高校生にとっての宿命のようなものだろう。それでも、未来に向けて一歩を踏み出す大切な日であることにはなんら変わりがない。
俺は無事、立英大学への合格を...小説版 Re:present ⑨ 【最終話】
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小説版 Re:present パート8
満からのメールの返信が来た。
『大丈夫。何時?』
それに対して、あたしは正午に自宅の最寄り駅の改札口を指定した。満に合格祈願のお守りを手渡したあの場所だ。あれはあたしのプレゼントの一つ目。もう一つ、どうしても受け取って欲しいものがある。
数ヵ月後に、満...小説版 Re:present ⑧
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小説版 Re:present パート7
北海道は十一月にもなると雪が山地を中心に降り積もり始める。最後の生命を輝かせるように木々は紅く染まり、その景色を見ながら人も冬に向けての最後の準備を始めるのだ。今年の札幌の初雪は例年よりも僅かに遅く、十一月も後半になってからになった。降り積もる雪を眺めながら...小説版 Re:present ⑦
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小説版 Re:present パート6
文化祭が終わると、途端に教室の空気が豹変した。楽しい時間はもう終わり。後はそれぞれの将来の夢を実現する為に、越えなければいけない壁に向かって走りださなければならないからだ。
あたしはそんな中、それでも不安を隠すことができなかった。あたしにとって人生初めての...小説版 Re:present ⑥
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小説版 Re:present パート5
「寺本。もう二学期だ。」
盆が過ぎ、八月も下旬を迎える頃、ドラムを叩きに来た俺に向かって山崎はそう言った。北海道の高校の夏休みは本州よりも一週間ほど短い。八月の終わりには二学期が始まるのである。その分、冬休みは降り積もる雪を考慮して本州よりも長いのだが。
...小説版 Re:present ⑤
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小説版 Re:present パート4
満が珍しく評価したそのバンドの演奏が終わり、次の団体が演奏を始めると、途端に興味を無くしたのか、満は今来た方向へ方向転換をすると再び歩き出した。
「あのバンドは上手くないの?」
あたしは僅かに目を細めながら、満にそう訊ねた。
「ああ。あれなら俺達の方が...小説版 Re:present ④
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小説版 Re:present パート3
札幌にも、短い夏がやって来た。
例年通り、よさこいソーラン祭りは大盛況の内に終了し、そしてそろそろ夏休みに突入しようとする頃、大通り公園ではさっぽろ夏まつりが盛大に開催される。何しろ、七月の下旬から八月のお盆過ぎまで、一カ月もの間ずっと祭りを開催しているの...小説版 Re:present ③
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小説版 Re:present パート2
ソメイヨシノが札幌の街を彩るのはいつもゴールデンウィークに突入してからになる。その頃になるとようやく街を覆う根雪が完全に溶け、草木が自然界の主導権を取り戻すのだ。街は緑に染まり、自然界だけではなく街の人々にも活力を与え、そしてその強い生命力をあたし達に余すと...小説版 Re:present ②
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小説版 Re:present パート1
幸せそうな人間を見ると、つい羨ましくなる。
あいつみたいに、好きな女が近くにいればいいのに。
俺はそうじゃない。
遠い北の大地に置いてきた彼女のことを思い出して、俺は一つ、溜息をついた。
「寺本、なに辛気臭い顔しているんだよ。」
いつもの音楽練習室...小説版 Re:present ①
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