キリタニ

知らない男の隣から一日を始めた
今日も白い鳥が紙を運んできた
「おはよう　ごはんは食べましたか？」
ベッドから起き上がりシャワーを浴び
髪を結って化粧をし
部屋を出る　天気が悪い
暖かいコーヒーを飲む
白い鳥は紙を置いて去る
「今日は雨がふりそうですね」
仕事に行く　疲れて帰る...

暗い暗い深い深い
とても寂しいところに
あたしは今まで疑問を持たず
希望の言葉も理解せず
ただ息をしていた
あのひとがいなければ
光の意味も解せないまま
あたしは幸せと錯覚出来ていたのに
至福の苦しみを
呼吸すらままならないわ...

知ってて知らないふりをするのね
最後があるなら最初もいらない
君が好きなその曲は
歌詞はとても悲しいものよ
眠れぬ夜は一人で過ごす
もう彼には会えない
寂しそうに見ないで
もうあげられないのよ
どうか責めないで
あたしを見て...

水分の多い部屋
猫が沈む
鳩の交尾
あたしは目から気泡を
君は腐敗した水に
黄色い空に溺れ
飛べない金魚
素直になれない
ごめんねは自分のために
ありがとうはつなぐために...

美しい庭を作り
愛らしい小鳥に餌をやり
晴れた日には木陰で眠り
小雨は窓辺で絵を描いた
ひとりきりの満たされた世界
訪問者はおらず
おいしい食事と安らかな眠り
優しい風に白い鍵
想い馳せるのはつらい
忘却は優しい...