思えば幼い頃から、身体はとても丈夫だった。
冬に周りが流行り病に倒れても、私は一度もかかったことがなかった。
母親も父親も、それをすごく誉めてくれていた。
そんな2人は何ともない、風邪をこじらせこの世を去った。
神様仏様、この世は皆平等なんでしょう?
どうして貴方たちは、私の大切な人ばかり奪っていくの?
***
目の前にあった世界は、一気に色を失った。
「医者の判断じゃ…もってあと、半年なんだってさ」
半年という言葉が、やけにリアルに心に響いた。
会えなくなる。死んでしまう。いなくなる。
当たり前だった彼の存在が、当たり前でなくなる。
そう考えたら、自然に涙が止まらなくなった。
次に私の意識が正常になった時、彼は私の下にいた。
私は彼の肩を掴んで、布団の上に押し倒していた。
彼の白い肌に、私の涙がいくつも零れ落ちている。
彼はひどく驚いた顔をして、大きな目をさらに大きく見開いていて。
それでも彼は、私を見つめている。
「…どうして?」
ぽつりと、言葉がこぼれた。
静かな部屋に、私の声が響き、それ以外に音はない。
私の声をさえぎるモノは何もなく、彼は私の声を聞いているらしかった。
「私…イヤ。だって、ずっと一緒に、いてるのに。
ずっとずっと、傍に居てるって、約束…したのに。
ねぇ、何で?どうして?いなく、ならないで。一人に、しないで」
涙がまたこぼれ始め、多分顔はもうぐちゃぐちゃで。
彼はそんな私をみて、優しく微笑んでくれた。
その微笑みは、私が初めて彼に出逢った時と同じ笑顔で。
暗い闇の仲から、救い出してくれたヒカリだった。
***
それから数分間、私も彼も何も言葉を発さなかった。
彼は私の顔をみながら微笑んでいるだけだったし、私は泣いてるだけだった。
「なぁ、お願いがあるんだけど」
無言を引き裂いたのは、彼のそんな一言で。
「…何?」
私は、少し震えた声で聞き返した。
「俺が、生きてる間…毎日、会いに来てくれない?」
少し驚いて、彼をみた。
その顔は、やっぱり優しい微笑みをうかべていた。
「人間、未練があるとしぶとく生きるもんだろ?だから、さ。
あ、そうだ。俺、桜が見たいんだ。
だから、春には一緒に花見にも行こう。
ひとりよりふたりの方が、楽しいだろーし」
そう言って、あれこれ予定を考えている彼を見て。
私は彼に、「楽しみにしてる」と赤い目をしたまま微笑んだ。
***
彼が生きれるなら、会いにこよう。
彼が生きれるなら、何でもしよう。
そう、本当に思ったから。
そう、本気で思えたから。
神様仏様。
ずっとなんて、いわない。永遠なんて、いわない。
だから、来年の春まではせめて――…。
恋桜 ~side少女~
ダラダラな小説です。本当にスイマセン。
とりあえず、病に倒れてる少年と看病してる少女の悲恋(?)話の少女目線です。
今度は少年目線でも、書いてみようかと思います。
…期待は、しないでください。ダメな子なので。
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