もうひとつのエピローグ

『もしも生まれ変われるのならば、その時はまた遊んでね』

 小瓶に込められた羊皮紙。それには良く似た字で同じ願いが書かれていて、片割れの生真面目さに苦笑する。
「もっと現実的な事を書けばいいのに」
 だけど、言い伝えそのものが何とも信じ難い話だ。奇跡を望むくらいが丁度良いのかもしれない。
 そんな事を考えていると、脇から声をかけられた。
「会わなくて良かったのか?」
 一回くらいなら神様も許してくれる。彼の気遣いに感謝しながら言葉を返した。
「私神様は信じてないの」
 いたとしてもかなりの性悪だ。弟や友達に辛い運命を押し付けた神なんかいなくても構わない。
 それに、自分達はもう現世から外れた存在。姿を見せても互いに辛いだけ。生きている者達の思い出にいるだけで充分だろう。
「そうでしょう? カイト」
 答えが予想外だったのか、彼は紺碧の目を見開いていた。ようやく未来へ踏み出した弟の足を引っ張りたくないし、別の理由もあった。
「レンはお化けが苦手だから」
「じゃあ止めた方が良いな」
 笑みを浮かべたカイトに釣られて頬が緩む。あの子は四年の間で乗り物酔いは克服出来ているけれど、昔からの怖がりが直ったかは怪しい。本人は隠したがって意地を張るだろうが。
「私も弟離れしないと」
 新天地へ旅立った片割れを見守りたい。でも、弟は最早姉の守りや助けを必要としていない。いつまでも傍にいた所で邪魔になるだけだ。
「もう良いんだな? リン」
「うん。ありがとう」
 手を繋いで水平線の彼方を眺める。穏やかな海と空は、弟の門出を祝ってくれているようだった。
 
 元気でね。レン。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

蒲公英が紡ぐ物語 第64話

 もう一つの悪ノの物語、これにて閉幕です。
 
 いつ終わるんだろう、終われるのかな、ハハ……。と不安でしたが、遥か遠くにあったゴールにやっと辿り着きました。
 長かったなぁ……。まあ、初期の投稿(執筆)ペース保ってればもっと早く終われたはずですが。
 
 真っ当な戦闘シーンがとにかく難しかった! この話をやるまでは精々喧嘩止まり、もしくは強さに差があり過ぎるものしか書いていなかったので。
 同時に、趣味に突っ走った所もあるので凄く楽しかったですね。リリィの棍とかアルのハルバードとか。

 最後まで読んで下さった方、本当にありがとうございました。




 追記 
 ピクシブでボカロ以外の小説投稿しました。
 http://www.pixiv.net/member.php?id=1441085

閲覧数:601

投稿日:2014/03/22 15:10:33

文字数:702文字

カテゴリ:小説

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    ha

    ご意見・ご感想

    ずっと更新追いかけていました!今回の悪ノもとても面白かったです。頑張ってください!

    2014/01/21 01:42:28

    • matatab1

      matatab1

       コメントありがとうございます。
       更新を追いかけていた、面白いと言ってもらえて嬉しいです。時間がかかっても書き終えて良かったなぁと。

      2014/01/22 11:31:55

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