読みは「またたび」、猫が好きなあれです。全く反応しない猫もいますが。 始めて作品を投稿した時は、こんなに続けられているとは思ってなかったです。 『同じ作者の別の曲』を小ネタで仕込む傾向あり。探してみるとちょっと楽しいかも。 ブックマークして貰ったり、メッセージを貰ったりとかありがたい限りです。 pixiv http://www.pixiv.net/member.php?id=1441085
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プロローグ 二年前
賑う道から離れた裏道に、一人の少女がいた。鮮やかな金髪と大きな白いリボンが目立ち、顔つきはどこか高貴な雰囲気がある。近くには不機嫌な顔をした男、向かい合って会話をしていた。
「……その事は謝ったでしょう。怪我をしているのなら病院まで案内しますよ?」
「謝るだけじゃすまねぇって言っ...むかしむかしの物語 王女と召使
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もうひとつのエピローグ
『もしも生まれ変われるのならば、その時はまた遊んでね』
小瓶に込められた羊皮紙。それには良く似た字で同じ願いが書かれていて、片割れの生真面目さに苦笑する。
「もっと現実的な事を書けばいいのに」
だけど、言い伝えそのものが何とも信じ難い話だ。奇跡を望むくらいが丁度良いのか...蒲公英が紡ぐ物語 第64話
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エピローグ 綿毛の行く先
打ち寄せる波の音が心地良い。水平線が澄んだ空と輝く海を分けて、同じ青でも異なる色合いを見せている。
海岸からゆっくり眺めるのはいつ以来だろう。独りぼっちになってから足が遠のいて、いつしか高い王宮から見下ろすのが当たり前だった。
もしかしたら、無意識の内に避けていたの...蒲公英が紡ぐ物語 第63話
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緑ノ革命
浅葱色の髪が歩く度に揺れ、すれ違う兵士や召使が恭しく迎え入れる。高い足音を立てて緑の王宮を進むのは、国王の妹ミク・エルフェン。慣れ親しんだ家に到着した彼女は、早速兄の元へ向かっていた。
本音を言えば旅で疲れた体を休めてから報告をしたいが、何分兄は仕事に忙殺される身である。時間を割く事...蒲公英が紡ぐ物語 第62話
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獅子の花
午後三時を伝える教会の鐘。定刻を知らせるに過ぎない音だが、墓地では鎮魂の音色として響く。
歴代の王族の墓が並ぶ場所を通り過ぎ、アレンとリリィは墓地の片隅へ向かう。リンと近衛兵隊は眠っているのは、まるで他の墓から追いやられたような一角である。周りと比べて明らかに手入れがされていない、落...蒲公英が紡ぐ物語 第61話
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金の双獣
「……ちゃん! 兄ちゃん!」
まどろみの中で声をかけられ、青年は目を覚ました。寝ぼけた頭を掻きながら体を起こし、荷馬車に乗せて貰っていたのを思い出す。野盗から馬をくすねて、もとい拝借した事も。
御者台へ振り返ると、穏やかに笑っている男性が見えた。彼の向こう側には開かれた門。目的地に到...蒲公英が紡ぐ物語 第60話
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壊れた箱庭 新たな一歩
割れるような歓声が広場を揺るがす。群衆は『悪ノ王子』の斬首に狂喜の叫びを上げ、圧政の終わりと新時代の始まりに熱狂していた。
首を晒せ、死体を吊るせと一部の国民が吠える。殺された王子を、リンを辱めようとする人々に、レンは嫌悪と憎悪が湧いた。
気持ち悪い。人が死んだのに笑...蒲公英が紡ぐ物語 第59話
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悪ノ散華
『悪ノ王子』の処刑にざわめく黄の国王都。広場では準備の段階で見物客が集まっていた。断頭台が運び出された際に畏怖の声が上がるも、見物客は興味と期待を隠しきれない。
王子は粛清した者達と同様の方法で殺されるのだと。
執行は午後三時。刃が落とされる瞬間を待ちわびる民衆は、異様な熱気に包まれ...蒲公英が紡ぐ物語 第58話
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種を撒く者
「……王子は、そこまでの覚悟を」
話を聞き終え、メイコは沈痛な面持ちで呟く。ミクは病人のように青ざめ、信じられないと首を振った。
「嘘。嘘よ……」
話を受け入れられない様子の彼女へ、リンは憐れみの視線を送る。緑の兵が略奪をしていた事とレンがカイト王子を殺していないと知り、緑の王女は...蒲公英が紡ぐ物語 第57話
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悪ノ覚悟 正義ノ傲慢
どれくらい経ったのかな。
鉄格子をぼんやりと眺めて、リンはふと思う。閉ざされた地下牢では外の様子も分からない。格子付きの窓が天井近くにあるので、精々昼か夜かの区別が付く程度。就寝と起床の回数もでたらめになってしまい、時間の感覚はとっくに消えてしまった。
『悪ノ王子』の惨め...蒲公英が紡ぐ物語 第56話
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翡翠が望む明日
木々が生い茂る森の中、少年は目の前で蹲る少女に訊ねた。
「どうして隠しちゃうの?」
少女が頭を押さえて涙ぐむ。
「……皆と違うから。緑髪じゃなくて、変だから」
少年は知っていた。少女が必死で隠そうとする髪の色を。それはこの国ではまず見ない、草木に映える金髪だ。少年自身、緑髪...蒲公英が紡ぐ物語 第55話
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巡る因果
自身の悲鳴が耳に届き、リリィは目を覚ました。見慣れない天井が真っ先に映る。瞬いた拍子に涙が零れて、泣きながら寝ていた事に気付いた。涙を拭いながら身を起こす。
ここは王都外れに建っていた空き小屋。焼け野原となった貧民街の方へ逃げる最中に偶然見つけた廃屋だ。辺りに人気は無く、一時的に身を...蒲公英が紡ぐ物語 第54話
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百合の傷
大陸を二分する程広大な、北から南に伸びる森。自然の国境線から少々離れた場所に町があった。そこは現在の地図に記されていない、村より少し大きい程度の田舎町。草木が多い牧歌的な風景に風が吹き抜けて、立ち並ぶ家に木々の匂いを運んだ。
屋敷の庭で爽やかな風を一身に浴びているのは、金髪の少女と緑...蒲公英が紡ぐ物語 第53話
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貫き通す嘘
浅い呼吸を繰り返してリリィは駆ける。長い金髪に軍服、剣と同じ長さの棒を腰に差した、かなり目立つ格好だったが、人気の無い道には彼女しかいなかった。
「流石にここら辺にはいない、か……」
息を整えながら周囲を見渡す。速度は落としたものの、足は動かし続けている。
王宮を脱出した直後は革...蒲公英が紡ぐ物語 第52話
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変わりゆくもの
目の前の敵兵が傾いで視界が開ける。手近の一群をかろうじて斬り捨てたトニオは、がっくりと膝を付いて項垂れた。息は上がり、鼓動が耳を打つ。双剣の一本は半ばで折れ、もう一本には亀裂が走っていた。
ここまでか……と自身の限界を悟り、重い頭を持ち上げる。周囲は血の海だ。王宮兵士と革命軍兵...蒲公英が紡ぐ物語 第51話
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傲慢の先
女傑二人が激突する頃。
レンは逃げも隠れもせず、一人静かに自室の執務椅子に座っていた。剣は手元から離れた壁に立てかけているので丸腰。体術は心得ているが、敵に囲まれれば抵抗の甲斐無く捕えられる。それを充分認識した上で、革命軍が王子の許へ来るのを待っていた。
「やっと終わるんだな」
圧政...蒲公英が紡ぐ物語 第50話