ピアプロを見ている皆さんは、きっと素晴らしいクリエイティブな活動をされていることでしょう。私は普段、システム開発という、どちらかというと「ロジック」と「ルール」の世界にいますが、そこで培った視点から、皆さんの「創作」について考えてみました。
私たちがシステムを作る際、最初に行うのが「要件定義」です。これは「何を作るか」「何ができるべきか」を明確に定める、設計図の土台です。この定義が曖昧だと、どんなに優れた技術(実装)を使っても、顧客が本当に欲しいものは生まれません。
では、音楽やイラスト、物語といったクリエイティブな創作における「要件定義」とは何でしょうか?
それは、作り手が最初に抱く「こうしたい」という、強い衝動やイメージかもしれません。「こんな曲を世界に聞かせたい」「このキャラクターを動かしたい」という、最も純粋な欲望です。
システム開発の世界では、要件定義はガチガチに固められ、途中の変更は極めて大きなコスト(工数)を伴います。特に、私が最初にいた大規模SIerのプロジェクトでは、一度定義された仕様は、絶対に動かしてはならない「神の領域」でした。
しかし、皆さんの創作活動を見ていて感じるのは、その「要件定義」が非常に柔軟で、むしろ途中の「仕様変更」こそが作品を良くしていくのではないか、ということです。
例えば、曲を作り始めた時、頭の中で鳴っていたメロディが、楽器を重ねていくうちに、全く別の、もっと魅力的なコード進行に変わっていく。キャラクターのポーズを描いていたのに、その途中で「この色の方が、この子の性格を表している」と気づき、配色をすべて変えてしまう。
システム開発では、これを「手戻り」と呼び、忌み嫌います。しかし、創作においては、この「手戻り」や「予期せぬ脱線」こそが、作品に深みを与え、独自性を生み出すエンジンになっているのではないでしょうか。
Webスタートアップの支援を始めてから、私もこの柔軟性の重要性に気づきました。ユーザーの反応(視聴者のコメントや評価)こそが、新たな「要件」です。初期の設計に固執せず、市場の声に合わせてフレームワークやデザインを大胆に変える勇気(仕様変更の柔軟性)が、サービスの成功には不可欠でした。
クリエイターの皆さんは、無意識のうちに、システム開発の最も難しい課題である「変化への対応」を実践しているのです。
だからこそ、皆さんは最初の「要件定義」(初期のイメージ)に縛られる必要はありません。あなたの創造性の「バグ」や「手戻り」を恐れず、その変化を楽しみながら、最高の作品という名の「プロダクト」を完成させてください。その自由さこそが、皆さんの最大の強みです。
【前嶋拳人】創作の「要件定義」はどこまで自由か?
コメント0
関連動画0
ご意見・ご感想