美しくなりたいと言った
私は醜いから
水たまり映り込む光に
泣き出しそうな顔で
雨上がり虹の向こうで
楽しげな子どもたちの声
真っ白なその声もう私には
ないもの
とっくに失くしたもの
小さな小さな手で
掴んでいた温かいママの手
世界は柔らかくきらきらしてた
何にも知らなかった頃私は
きっと今よりもずっと
きれいだった
美しくなりたいと願った
私は醜いから
木漏れ日緑色に染まった
走る夏を横目に
いつの間にか大人になった
いつまでも子供じゃなかった
強い太陽を追いかけたあの日はもう
記憶の隅で埃まみれで
大きな大きな空見上げていた
小さな私には世界が
あまりにも大きく見えて
何にも知らなかった頃はきっと
優しいたくさんのものに
守られていた
前だけを見て走り続けた
立ち止まる影を捨てて
いつの間にか走っているのは私だけ
もう誰もいなかった
小さな小さな手で掴んでいた
大切だったはずのモノは
指の隙間から零れて
私の足跡にキラキラ光る星屑
もう届かない時代を教えてくれた
小さな私は遠く遠く
きれいに見えた
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