残された時間は後わずか
電車は車輪を進めるらしい
僕を置いてかないでおくれよ
車窓の奥には君の姿が
金属バットで叩き割ればいとも簡単に近づけるよ
それは重々承知のうえで
君に近づこうならばたちまち車掌がやってきて僕を怒鳴りつけるだろう
まずバットが重くて持ち上げられない
こんなバットを作ったのはどいつ
ランドセルをしょった少女が近づいてきてる
「君は迷子かい?」
僕が問うと彼女は無言でバットを軽々と持ち上げてそれを持ち去ってしまったんだ
僕が僕である理由は時代でも社会のせいでもなくて僕にあるんだろう?
まあいい
次の電車で君を追いかけよう
時刻表なんかとっくに捨てちまった
正しく生きる事に疲れたんだろうか?
「飛び降りてやろうか?」
そんな勇気もない
あれから一時間たつ
いくつものベンチから一つ選ぶ
当たり外れは無い
この世界にただ独り取り残された気分
周りには誰も…
駅員がやってきた
死んだ目の彼はこう言った
「さっきのが最終電車だよ」と
君はいない
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