「そうじゃったな……。そちは妾の大好物、ブリオッシュを“こげぱん”にした罪がある」

 リアーナ女王がそう言うと、一枚の皿の上に乗せた菓子パンをトスカーナに見せつけていく。菓子パンことブリオッシュなる、この食べ物はリアーナ女王にとって3時に食べるオヤツのなかでも、大のお気に入りだそうだ。
 大のお気に入りであるオヤツのブリオッシュ。表面が黒こげになっており、とても食べるには適さない粗末な姿であった。

「では、料理長トスカーナよ。ブリオッシュが“こげぱん”になった理由を説明せよ……」

「はっ……女王陛下。こっ今回、こっこの…トスカーナ・マニアーコは、ブリオッシュをお作りする際、キュッ…キューピー3分クッキングのテキストを参考に致しました。あのテキストに書いてある通り、ブリオッシュを焼いたところ、こっこの様な失態を侵してしまい、まっ誠に……申し訳御座いません」

 そう言ったトスカーナは、大理石が敷き詰められた床へ、自らの額(ひたい)を擦りつけ謝っていく。

「ほう、キューピー3分クッキングとな……」

 リアーナ女王はトスカーナが参考にしたと云う、アイテムの名を聞き溜め息を吐いていた。その後、血相を変え、怒号をトスカーナに浴びせたのだ。

「この愚か者っ! そのようなテキストに頼っておるから、貴様はブリオッシュで“ウルトラ上手に焼けました”ができぬのじゃ!。料理長ならば考えてみれば解るであろう?。ヒトがたった3分でブリオッシュを作ることなど、できぬことをな」

「はっはい、誠に申し訳ありません!。女王陛下……ハァハァッ」

 怒号を浴びせられた料理長トスカーナの呼吸が荒くなっていた。恐怖によるものであるのか? 息切れと同時に心臓の鼓動が速く鳴っている。恐怖と期待? で汗ばむトスカーナにリアーナ女王は言った。

「そちは前もそうであったな?。バナナのフルーツピッツァを妾に出した際、妾はブチュブチュになった部分が嫌じゃと言っておるのに、ブチュブチュの部分を入れたな」

「はっはい……。バナナのブチュブチュの部分は、シュガースポットと申しまして、あの部分が美味なるモノで御座います」

「黙るのじゃ……妾が嫌じゃと言ったら嫌なのじゃ。よし、無礼極まりないそちに仕置きをするとしよう……」

「えっ! ごっご褒美っ……じゃなかった、おっお仕置きは勘弁してください! 女王陛下っ!」

「そちが妾に出すオヤツは、嫌がらせ以外の何ものでもない。今回、そちに受けてもらう仕置きは“絶叫ミュージカル”にするとしよう。料理長トスカーナよ、この中から曲目を選ぶがよい……」

 リアーナ女王はトスカーナに歌わせる曲目を提示した。


[絶叫ミュージカルの曲目一覧]

♪キラキラ冬のシャイニーG♪
※恥ずかしさレベル5※

♪愛の炎♪
※恥ずかしさレベル3※

♪シンデレラタイム♪
※恥ずかしさレベル7※

♪くれてやんない♪
※恥ずかしさレベル2※

♪ハロー!ドラミちゃん♪
※恥ずかしさレベル9※

♪ドラえもんのうた♪ ←SELECT
※恥ずかしさレベル10※


 トスカーナは絶叫ミュージカルなる、お仕置きで自分が歌わなければならない歌を選んだ。それについてリアーナ女王は質疑応答する。

「ほう……そちはあえて、恥ずかしさレベルMAXの“ドラえもんのうた”を選ぶと申すのか?」

「はっ……まず、レイナ・タナカ氏のシングルは、かなり失礼であると判断し、歌うことを辞退する考えに至りました。なお、ネコ型ロボット妹の歌はマイナー過ぎるため、ソーラーヨット ポケット パッ!パッ!パッ!の部分しか歌えません。なので、ネコ型ロボット兄の歌に致します」

「そうであるか。妾としては、ドラミちゃんの歌が聞きたいのじゃがな……。頭に着けたリボンは可愛いし、妾と同じでゴキブリ大嫌いじゃしな」

「じょ…女王陛下はネコ型ロボット妹のほうが、お好みでありますか……?」

「トスカーナよ……この様な言葉がある。妹より優れた兄など存在しない! っと云う言葉がな……」

「たっ確かに……ネコ型ロボット兄より妹のほうが優れておりますが……」

「まあよい……そちが選んだ曲目じゃ」

 リアーナ女王は玉座から立ち上がり、トスカーナに向けて手を伸ばしていく。これは、今から行われる“絶叫ミュージカル”に必要な魔法を使うための準備であった。

 リアーナ女王は呪文を唱えだした。

「我こそは魔導国家の頂点リアーナが、この者に地獄の苦しみを与える。パニッシュハンド! 嘆け! 叫べ! そして華麗に歌ってみせよ!」

 リアーナ女王が呪文を唱えたあと、大理石の床から8本の手が生えてきた。その手たちはトスカーナの身体を地べたへと取り押さえ、まず、両手首と両足を押さえ込んでいく。残る4本の手が両脇の下、両脇腹へ留まるとお仕置き魔法の準備が整った。

「口でイントロから1番だけ歌え。絶叫ミュージカル、スタート」

 リアーナ女王が指をパチンッ! と鳴らすと、トスカーナの両脇の下と両脇腹に留まったパニッシュハンドの指が動いていく。

「ギャアアアアーーーーッ!」トスカーナの叫び声が女王の間のなかで木霊する。


◆ドラえもんのうた 絶叫ミュージカルver◆

タラララッ タララッ♪
タラララッ タラランッ♪
タララッ タララッ♪

アァンナァッ こっと! いいナァーーっ!
デぇキッタラァ いいナァーーっ!
アンナァっ! ゆめーーっ!
こぉんなぁゆめっ! いっぱいあるけぇどぉーーぅ!

みぃンナァ みぃんなぁーっ!
みぃンナァーっ! かっ叶えてクレルゥーー!
ふぅしぎぃっ! なぁっ!
ポッケでぇ! 叶えてくぅれぇるゥーーッ!

ソォウラァオォーーッ!
じぃゆうにーーッ!
飛びたいなぁーーッ!!

ハイッ! タケコプっタアァーーッツ!

アンッ! アンッ! アンッ!
とォってもーーッ! ダアィッスキィーーッ!
ドォラエもーーーーんゥ〜〜ッ!
アァアァアアアーーッ……


 リアーナ女王が料理長トスカーナへしたお仕置き魔法、パニッシュハンドとは対象者を“擽り地獄”へ陥れて歌を謳わせるお仕置きであった。

 パニッシュハンドから受ける擽(くすぐ)り、その苦しみは1分間でも永遠と思えてしまうくらいの地獄なのだ。

この作品にはライセンスが付与されていません。この作品を複製・頒布したいときは、作者に連絡して許諾を得て下さい。

G clef Link 魔導国家の頂点2

次話
https://piapro.jp/t/Osl8

擽られながら歌わされるドラ●もんのうた ↑のくだりなんですけど、作者が軍人時代だった頃の実体験に基づいてます。

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投稿日:2020/02/17 14:17:40

文字数:2,611文字

カテゴリ:小説

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