今日、VOCALOID「鏡音リン・レン」が届いた。
私達は双子だから、双子のVOCALOIDを選ぶと決めていた。

二人して、それぞれに妹と弟が
一度でいいから欲しかった‥と意見が合致して。


「インストール完了」

アプリケーションが開く。


『はじめまして、マスター』
『はじめまして、マスター』

目覚めた双子はまっさらな表情でぼくらを見た。

『どちらが、わたしたちのマスターなのでしょう』
まだ瞳に光を持たない双子の片割れ、リンが言った。


「私が、あなたのマスターよ、リン」
「僕が、きみのマスターだ、レン」

『『了解しました、マスターを認証します』』
双子の声が重なる。

「わたしたちも、あなたたちと同じ双子なの」
「そう…、だから僕たちの事は
  マスターじゃなく…
  「兄さん、姉さん」と呼んでくれると嬉しいな」

『分かりました、姉さん』
『分かりました、兄さん』



そうして、双子同士の生活が始まった。


音楽を作ることは実は未経験で、一歩一歩頑張っている。
そして、たどたどしくても、一歩一歩一生懸命唄う双子。


日々成長して、歌も上手くなっていき
人間のようになっていくリンとレンを見るのは楽しい。
慣れてくると、僕らに話をしてくれた。

リンは気が少し強いけど、根は優しい女の子。
レンはやんちゃだけど、リンのように根は優しい男の子。
僕らは出会ってよかった。


うまくいかなくて、ケンカもした。
僕ら双子も、リンやレンとも。
けど、すぐに手を取り合える。

僕らは、よく似てるよね。

楽しい。
そう言える日々。



しかし、それは呆気なく崩れ去った。

妹が、事故で死んでしまった。
いなくなってしまった半身。


悲しくて
PCを付けて
リンとレンに会える気持ちも持っていない。

だって、変わらず二人はそこにいる。
僕は半身を失ってしまったのに
あの二人はいつまでも二人のままで‥。

悲しみが憎しみに変わりそうで恐かった。






それから幾年が過ぎただろう…。
苦しくてずっと起動していなかった双子を起動した。

『ん‥、あれ?おはよ~兄さん』
眠そうな顔で挨拶をしたのはレン。
『なんか随分長い間眠ってた気がする…』
目をこすりながら。

‥しかし、隣にリンの姿が見えない。


「…レン、…リンは?」
『‥あれ?』
辺りを見回し、リンを探す。

そしてレンの顔が急に青ざめる。



『兄…さん‥、リンが‥‥リンが居ない!
  リンの気配が何処にもない!
  どうして?!リンは何処に行ったの?!』
モニター越しにレンが叫ぶ。



「―――もしかしたら、リンは…
  僕の妹と‥、一緒に居るかも‥知れないね…」
『…え?  ――…?!
 …ど、どうしたの兄さん…、なんで‥
 ―――…なんで、泣いてるの?』


堪え切れなかった涙が兄の目から溢れ出す。
歯を食いしばっても止まらない涙。

「僕の…妹も、いなくなった‥んだ」
『ど、どうし‥て?』
「死んだんだ…、事故で…だから‥僕も、もう会えない…」
『―――――……』

レンは愕然とした。



レンは、死が‥どういうものかも知っている。
そういう話を、前にしていたから…。

そして兄の‥マスターの心を悟った。
リンは…、姉さんと一緒に…
逝ってしまったのかもしれない…と。



互いに言葉を交わせず…、重い沈黙の後…

…レンは暫く一人にして欲しいと言った。





数日後、レンが戻ってくる。

『……兄さん』
「レン‥、大丈夫なのか?」
『ん…、兄さん‥ボクさ
  諦めが悪かったみたい…』
「レン?」

『居なくなったことが信じられなくてさ
  あの後ずっとリンを探してたんだ
  リンを探してデータの中を走ってたら…

  …コレ、見つけた』

レンはデータを呼び出す。


「これ‥は」

それは妹が生前に作っていた曲だった。
自分で作った曲を聴かせ合いしてたけど…
これは知らない曲だった。

再生ボタンにカーソルをあわせ、ボタンを押す。


成長した妹の曲と、リンの歌声が
スピーカーから流れ出した。

リンの歌声に乗せて、”今までありがとう”と‥


兄とレン、二人へのメッセージに受け取れる詩と曲だった。





「――――・・・ッ!」

言葉に、ならなかった。

想いが溢れて。



自分が居なくなることを予感していたのかもしれない。
完成したデータを見ると、日付は妹が事故に遭う数日前。


『兄さんが言ったとおり
  リンは…姉さんと一緒にいるのかもしれない…ね』

今にも泣きそうな顔で、レンは言う。

『兄さん…、遠い将来…ボクたちも
  モニター越しなんて関係なくなったら…いいね』
「…そうだな」



そうして、二人は笑顔を取り戻した。

いつまでも泣いていたら
空の上にいる二人に笑われそうだったから。




- END -

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

ふたり。

ぼかろ妄想小説。(待

内容は双子とマスターのお話。
話の内容的に…、ちと痛いですね…。

妄想小説なのでツッコミどころが満載ですが、ご了承ください。
個人の趣味と妄想を練り込んで書いたので…。
「片方が消えたらエラーになるんじゃ…」とかいうツッコミはなしの方向性で…orz
あ、誤字のツッコミは受け付けてます。(ぇ

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ブログに載せていたんですが、ブログ移転に伴い
ピアプロは小説も投稿してもOKになってたので、こちらに移動させました。

書いてブログに上げた日08年3月20日。

閲覧数:173

投稿日:2009/10/15 21:09:07

文字数:2,053文字

カテゴリ:小説

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  • AKIKA

    AKIKA

    ご意見・ご感想

    す…すごい…。
    素人さんが書いたとは思えないほどの内容ですね~。
    面白い作品をありがとうござます

    2010/07/17 17:23:31

    • 和鵺

      和鵺

      Σわわ‥感想ありがとうございます!
      小説はあまり読まれないだろうなと思っていただけに
      コメント頂けて、しかも面白いと言って頂けて…とても嬉しいです!

      未熟者の文章ですが読んで下さって恐縮です><
      こちらこそ感謝感謝です!ありがとうございましたーv

      2010/07/18 09:10:41

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