*21/3/27 名古屋ボカストにて頒布しましたカイメイ中心ボカロオールキャラ小説合同誌のサンプルです
*前のバージョン機能が終了したためこちらのページでそのまま読めるように編集しました
1. 陽葵ちず 幸せだけが在る夜に
2.ゆるりー 君に捧ぐワンシーンを
3.茶猫 秘密のおやつは蜜の味
4.すぅ スイート・ウェディング
5.ayumin きみから音楽をうばうやつはクズだよ
*****
幸せだけが在る夜に
陽葵 ちず
明日はお休みだから朝から遊園地に行くといって、リンとレンは既にベッドの中にいる。元気なことだ。お休みにはお休みしたい大人たちは、控えめな夕飯をとったあとで外に出た。
昼間の日差しは暖かいが、夜風はまだ冷たい。薄着のメイコには特に、アウターを羽織らせて正解だった。それでも、店に入ると暖房が効いている。脱ぐのを億劫がっているうちに、額に薄く汗が浮かんだ。
本のコーナーは賑わっているが、レンタルコーナーは閑散としている。映画もドラマもアニメも、インターネット上にサブスクが溢れかえっているからだろう。クリプトン家でも登録しているから、何万本という作品を気軽にテレビやパソコンで視聴できる。それでもカイトは、こうして店で並んでいるパッケージを眺めるのが好きだった。お気に入りの映画に手書きのPOPがついていたり、連続して借りている古いドラマの次の巻だけ借りられていたり。画面のスクロールとはまた違う面白さがある。
あと十年もすれば、パッケージは必需品から嗜好品になるに違いない。パソコンソフトだって、今はダウンロード販売が主流なのだから。
どこかセンチメンタルな気持ちで、カイトはずらりと並んだタイトルのひとつひとつを指でなぞっていった。
「いた」
すぐ横に人の気配がやってきて、カイトの手元をひょいと覗いた。アクション映画のコーナーをふらふらしていたはずのメイコである。
「決まった?」
「うん。カイトは?」
「これとこれで悩んでる」
カイトがいるのは、新作映画がずらりと並んだ棚の前だった。一泊二日。三泊四日。短い期間のレンタルになる上に、旧作映画よりも百円近く高い。
メイコが持ってきたケースにも、準新作の文字が躍っていた。
「両方借りちゃえばいいじゃない」
安い旧作から選んでね、ひとりひとつまでだからね。妹弟達と来た時にはそう言っている手前、カイトは唸った。
夜のコンビニは閑散としていて、レジに立つ若い店員は眠そうな目で店内を見渡している。ここから更に十分かかるスーパーマーケットまで行かないのは、こんな夜だけだった。スーパーの特売より百円近く高いアイスを二つも手に取ることが許されるのも。
メイコは冷蔵ケースの前を陣取り、次々と酒の缶を抱えていく。見かねたカイトは、入り口付近に置いてあるカゴを手に取った。
「はい、いれて」
「あ、どーもー」
「めーちゃん、アイス何がいい?」
「私、いらなーい」
「はーい」
そんなことを言いながら、カイトが食べていれば「私にもちょうだい」が始まるのだ。カイトは一応返事をしつつ、メイコが好きなストロベリーのアイスをもう一つ、カゴに入れた。
ふと視線を移すと、スイーツコーナーがやけに賑わっている。どうやら新作が出たらしい。タイプの違うチーズケーキが二種類。
「これも買っていい?」
尋ねると、メイコは振り向きもせずに「いいよ」と応えた。
「あと、裂きイカ買おうか」
「俺、ポテトチップス食べたい」
「あ、いいね~。」
スーパーのものよりも小さいカゴが、どんどんいっぱいになっていく。
******
君に捧ぐワンシーンを
ゆるりー
ずっと一緒にいたいと思った。きっかけはそれだけだった。
「僕さあ、彼女にプロポーズしようと思うんだよね」
「先輩、それはベロンベロンに酔い潰れる前に言うことじゃないですか?」
失敬な、まだ酔い潰れていない。確かに久々に会う高校時代の部活仲間と飲むお酒がおいしくて、何杯か飲みはしたけど、今日この後輩としたかった話の本題に入っているから、まだベロンベロンでもないはずだ。それに僕の記憶が確かなら、このメンバーの中で最も酒に強いのは僕だったはずだから、僕がもし酔い潰れているのなら全滅しているはずなのである。
「いやいや、ベロンベロンには酔ってないよ、起きて話ができてるからセーフセーフ」
「酔っ払いはみんなそう言うんですよ」
「だーかーらー……もういいや。それでプロポーズの話なんだけどさ、どんな風に伝えればいいかを相談したくて」
「なんだって私に聞くんです?」
「いろいろな人に聞いて参考にしようと思ってね。話を聞けそうな人たちの中で最初に会うのがルカだったから」
「ははあ、それなら安心しました。私一人の意見を全面採用されるのは責任が重すぎますから」
今日集まったメンバーはわずかで、僕と後輩のルカを含めて五人ほど。僕ら二人以外の三人はそれぞれ机に突っ伏したり壁にもたれたりで既に眠っている。……そうなるほどに飲むなよ、と注意をしても聞かないのがダメなところである。そして僕は人のことは言えない。
「ルカとしては、プロポーズはどういうのが嬉しいかな?」
「そうですねえ。大切な人からのプロポーズは何を言われても嬉しいですよ、きっと」
「うーん、アバウト……というか、ルカのところは結婚秒読みかと思っていたから、もうとっくにプロポーズを受けてるものだと思っていたよ」
「彼とは付き合って何年か経ちますけど、だからこそ改めて結婚を切り出すのは難しいんだと思いますよ」
「そういうものかなあ」
ルカの恋人でもあり、僕の友人でもある男は、かなりルカに対しては甘かった気がする。惚気を延々と聞かせるタイプではないが、言動の端々に恋人を思う気持ちが見えて、そういう意味ではかなり信頼できる。大切にしすぎるからこそ、今の関係をなかなか変えられないということだろうか。
「まあ、プロポーズをどうするか考える前に、先輩は水を飲んでください」
「なんで? 僕まだ酔ってないって」
「そう言って、うだうだ言っているうちに寝てしまうんだって、彼から聞きました。水は飲めるうちに飲んでおいたほうが明日の先輩のためになりますよ」
持とうとしていたグラスを取り上げられて、いつの間に注文していたのだろうか、水の入った小さなグラスを目の前に置かれた。
「それじゃあ改めて、大切な人との未来を選んだカイト先輩の決意に、乾杯」
*****
秘密のおやつは蜜の味
茶猫
春を目前にして段々と日が長くなってきたものの、まだまだ愛用のマフラーが頼もしい季節。花の金曜日だというのに運悪く緊急の案件が舞い込んでしまい、定時を大幅に過ぎての退社となってしまったカイトは、すっかり暗くなった街並みを車窓から眺めていた。今日はメイコと地上波でやっている映画を見ようと思っていたのに、もう中盤に差し掛かろうかという時刻になっている。はぁ、と盛大に溜息を吐けば、逃げていく幸福と入れ替わりに疲労感がどっと押し寄せてきた。
「甘いものが、食べたいな」
人がまばらに座っている電車内でそう小さく呟くと、何だかもう無性に口が甘味を欲して堪らなくなり、天を仰ぐかわりに背もたれに体重を思いきりかけた。カラフルな吊革広告たちが、空調と電車の揺れで小さくはためいている。そしてその中の一枚を見て、あることを思いついた。そして今甘いものを食べたい衝動とそれを天秤にかけた結果、駅ビルのギリギリ開いているお高めのスーパーで、大きめの杏仁豆腐と数種類の食材、それからちょっと良いお酒を買って帰った。結局どちらの皿も平等に重かったからだ。
駅から数分歩いた住宅街。規則的に並んだ家々からは温かな光が漏れ、どこからか遅めの夕飯の香りが漂ってくる。曲がり角から十数メートル先に見えた我が家も、カーテンの隙間から灯りがちらついている。ポストを確認し、玄関を開けると、鍵を挿した音に気付いたのかメイコが廊下に出てきていた。
「ただいま……。遅くなってごめんね」
「おかえり。ごはん温めて……って、えらく大荷物ね」
えへへ、ちょっとお土産に。といたずらっぽく笑いながら二つ下げたビニール袋のうちの一つを持ち上げると、スーパーのロゴを見た彼女の目がきらりと光った。
「それ、美味しいヤツじゃないの!」
「うん、ごはんの後で一緒に食べようね」
やった、と小さく拳を握るメイコに夕食の支度を頼んで、部屋着に着替えるべく脱衣所へと向かった。
夕食後、杏仁豆腐を二人でつつきながら、もうひとつのビニール袋を出す。怪訝な顔をしたメイコに、カイトは真剣な表情と声色で言った。
「お願いがあります」
「な、何でしょう」
ただならぬ雰囲気に、緊張が走る。
「めーちゃんの手作りお菓子が食べたいです」
「…………は?」
「これは材料です」
袋の中身は薄力粉、グラニュー糖、無塩バター、卵、ベーキングパウダー、ドライフルーツ、バナナ、りんご。
「どうしても食べたくなったので、自費で買ってきました。お願いします」
そう言って深々と頭を下げると、困惑気味だった彼女から笑い声が聞こえてきた。
「真剣な顔して何を言い出すかと思えば、ふふ、お菓子って、あはは!」
ひとしきり笑ったあと、目の端に滲んだ涙を指で拭って、メイコは答えた。
「いいわよ、作ったげるわ」
こうして、我が家の明日のおやつはメイコの手作りお菓子になったのである。
*****
スイート・ウェディング
すぅ
大安吉日。都内某所。天気は晴れ。
今をときめく人気女優が突如結婚を発表し、それから二年弱。今日は彼女がさらに輝く日だ。
ウェルカムボードに書かれた【MEIKO】という名前。ボードのデザインが洋風だからそれに合わせたのかもしれないけど、偶然にも彼女の芸名と一緒だ。もしかしたら、そっちを軸にしてウェルカムボードを書いたのかもしれないけど。
舞台に映画にCMに引っ張りだこ状態の女優MEIKO。デビュー作「黄泉桜」で主演を飾って以降、飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍している。そんな彼女の結婚は、ある日唐突に発表されたもんだからとても驚いたのを覚えている。後から本人に聞いた話だと、ある週刊誌に同棲の証拠を撮られ、それが載せられるくらいだったらと結婚することにしたらしい。なんとも破天荒な話だけど、まあ彼女らしいといえばらしいかも、と思うことにした。
披露宴会場の席に着くと、既に何人か着席している。私の卓はMEIKOと何度か共演したことがあり、かつ友人関係にある女優が集められていた。お相手が一般人ということもあって、周辺の卓は芸能関係者で固められているらしい。ここら辺の調節も大変だったろうに、忙しい中よく計画したものだ。まあ忙しかったからこそ、結婚発表してから式や披露宴まで二年弱もかかったんだろうけどね。
友人たちの談笑する声を聞きながら、私はカバンの中にある一枚の紙を開いてにらめっこを始めた。何を隠そう、MEIKO側の友人代表挨拶を任されてしまったのだ。とは言っても数人いる中での一人らしいのでそんなに話さなくてもいいらしいけど、業界関係者の代表には変わりがない。それに「スピーチを任せられるのはあなたしか考えられない」なんて言われてしまったら、断ろうにも断れないのが人間ってもんだろう。
年上後輩、この業界では珍しくもない。「黄泉桜」で共演した時、MEIKOは二十で私は十七。元々アイドルをしていてちょこちょことドラマも出ていたから芸歴は私のが上だけど、年は彼女の方が三つも上。でも映画の中では同級生だったものだから、お互いに面倒になっちゃって敬語で話すのを早々にやめた。そこからは何かと共演が多かったり、タイプも違うのに気が合うので仕事でもプライベートでも一緒になる機会が多い。それを考えると友人代表スピーチも適任なのか…?いやそれとこれは話が別だ、荷が重い。早く披露宴始まらないかな、そして早くスピーチ終わらないかな。
*****
きみから音楽をうばうやつはクズだよ
ayumin
「飲み過ぎ」
君の一言でぴしゃんと冷や水が浴びせられたみたいに正気に戻る。
多分だいぶ飲んでいる。とっくに酩酊、ふわふわと明るい領域を通り越している。うっすらと瞼と瞼のあいだから、さっきまで琥珀色が半分以上を占めていたはずの透明なビンが見える。あー確かにだいぶ飲んだかもなぁ。
……頭が痛い。
というかそもそも普段こんなに飲むことなんて最近はなかったはずで。
今日は私は久々のオフで、やけに静かなこの部屋の中で、昼くらいに起きて……そこから先が全く思い出せない。
カイトは今日も仕事で帰りが確かそこそこ。ってことは……。
「めーちゃん、もしかしてこれ昼からずっと飲んでる……?」
「かいと、おかえり」
「ただいま」
おかえりで合っているということはどうやらそういうことらしい。昼に起床してからの一切の記憶がない。
てきぱきとコートを脱いで手を洗っての一連のくだりをすませているカイトを眺めながらゆっくりと頭を動かしてみる。お腹が空いていたからウイスキーの角瓶を取り出したところまでは思い出した。いやなんで寝起きで角瓶を取り出したの。そうだ、たしかお酒を出したはいいものの注いだところでつまみになるものが何一つないと気づいて。えっつまりつまみがないままノンストップで空きっ腹にロックあるいはハイボールをこの時間まで、それこそ瓶の残量がちょびっとになるまで飲んでたってこと?いくら酒に強い私でも流石に酔いつぶれるわけだ。
というかなんでそこまで頭回ってなかったわけ。
ああ確か嫌な夢を見たんだっけ。
【カイメイ中心合同誌】36枚目の楽譜に階名を【サンプル】
26/01/17
やたら読まれてますが闇バイトか何かですか?
前のバージョン機能がサ終してたのでこちらでそのまま読めるように直しました まだあるので買ってくださいマジで
2021/03/28
booth通販リンク追加
pixiv版→https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=14905720
■ 3/27 VOCALOID STREET 03 名古屋 スペースc-05「かなりあ荘文芸部」にて頒布します カイメイ中心オールキャラの合同小説同人誌「36枚目の楽譜に階名を」のサンプルです
■ 頒布価格は今回も600円です
■ 今回の執筆メンバーは
ayumin(紺)、すぅ https://piapro.jp/lily_suu528、茶猫 https://piapro.jp/teacat_chaneko、陽葵ちず https://www.pixiv.net/users/13266357、ゆるりー https://piapro.jp/yurukarain の五人です!
1. 陽葵ちず 幸せだけが在る夜に
2.ゆるりー 君に捧ぐワンシーンを
3.茶猫 秘密のおやつは蜜の味
4.すぅ スイート・ウェディング
5.ayumin きみから音楽をうばうやつはクズだよ
■ boothで通販開始しています
カイメイ「とある二人のおうち事情」
→https://kon-minshop2312.booth.pm/items/1392423
がくルカ「世界一君を愛してるだけのパートナーはダメですか?」
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