ふと、見上げた空は赤々と夕焼け色に染まり、そこに一筋、限りなく黒に近い灰色のラインがみえた。――黒煙?
その方向には、たしか――
「桜が…っ」
燃えている――?
「!!」
桜のところまで来て、リンは立ち尽くした。真っ赤に燃える炎の中、巨大な墨の固まりと化した桜の木が今にも折れてしまいそうになっている。どうやら、レンはまだ戻っていないようだ。それだけでも一安心であるが、この状況をレンが見たら、さぞレンは悲しむことだろう。兎に角、火を消さなければいけない。
まずは消防車を呼んでから、地道に水をかけて火を消そうとする。まだ、間に合う。まだ、どうにかなるのだ。どうにかしてみせる。
小屋へと周り、ホースを水道につないで…
「リンっ」
慌てた様子でレンが走ってくると、リンは呆然としたままその場に座り込んで、脱力感と自らの無力さに涙をこぼしていた。
「…ごめん、レン…」
「リン…」
「桜…燃えちゃった…」
「リン」
「気付かなくて…っ」
「リン」
「私、何もできなく…て…?」
ぎゅっと締め付けられるような少し苦しいくらいの感覚は、どこか暖かで、どこか優しくて、思わずリンはその腕に身を任せていた。
「…もう、いいから」
「れ…」
「もう、いいんだ」
「レン…」
「おまえが無事だっただけでいいんだって…」
「でも…桜…」
「桜は!桜は…もう…いいから」
肩の辺りに暖かい液体の感覚がする。
…泣いているのか。あのレンが、こうも簡単に涙を流すなどリンは予想もしていなかった。
「どうして…桜、燃えちゃったんだよ?大切な桜なんでしょ?燃えちゃって、もう、灰しか残ってない――」
「大切だったのは、桜じゃないんだ――」
しばらくして、レンは桜があった辺りの土を掘り、土の中から古めかしい箱を取り出してリンに見せた。あまり笑顔ではない。
「それは…?」
無言でレンがふたを取ると、リンは思わず顔をしかめた。
「骨…」
「そう。…これは、『リン』の骨なんだ」
「!」
『リン』。それは、あの手紙の少女に違いない。やはり、彼女はすでにこの世にはいなかったのだ。
ああ、だからレンはあの桜の木を離れようとしなかったのか。ここに、大切な人が眠っているから――。
「…リンは、自殺したんだ。学校の屋上から飛び降りて」
花束を屋上に置いたのも、そのため。
「怖いくらい、鮮明に覚えてる。…何も出来なかったなぁ」
「レン…」
真実を告げるべき?
多分、あの手紙の内容の一部はレンも知らないのだろうが、それを教えてやるべきなのだろうか?今、レンは自分の所為だと思っているのに違いない。
「あのね、レン――」
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