「事情は把握したがいきなり植木鉢で殴るのは強盗じゃないのか?」
「つい、日頃の恨みが…。」
「まぁまぁ、幾徒さんも無事思い出して良かったじゃない!…ね?」

何だか殴り合いにでもなりそうな二人をレイさんが何とか和ませていた。ゼロさんの話では幾徒さんにも『脚本』の言魂が打ち込まれていて、やっぱり流船を含めて幾つかの記憶が改竄されていたらしい。

「それで?これから一体どうするんだ?流船の事もだけど『脚本』打った奴
 とか判らないんだろ?」
「簡単だ。過去に消されたなら過去を変えれば済む話だ。」

あっさりと言い切った幾徒さんに私を含め全員が絶句した。

「それタイムマシンじゃないの?」
「魔法使いじゃないんだから…。」
「え?出来るぞ?ちょっと負担がでかいけど。」
「嘘ぉ?!」

そう言うと幾徒さんは手近にあったPCを起動させて何やらグラフの様な物を画面に表示させた。目にも止まらぬスピードでキーを叩くとグラフに訳の判らない大量の数字と幾つかの星が出て来た。

「何これ?意味判んない。」
「判って溜まるか。まぁ簡単に言うと年表みたいな物なんだけど…流船が
 消されてしまったのがこの端の点、時間で言う所の10年前だ。ここに行って
 流船を助ければ良いんだけど…問題が少々。」
「な、何…?」
「10年前に飛ぶには出力足りないんだよ。」
「だけかよ?!」
「うん。」

もう一度殴りあいになりそうな二人をレイさんと鈴々さんが何とか宥めていた。溜息の後呆れる様に頼流お兄ちゃんが口を開いた。

「…で?どうすれば良い訳?」
「それこそ簡単だ、出力…つまり言魂使を集めれば良い。此処に居ない適合者…
 鬱音コア、凱瑠クロア、曖兎音イコ、拓音ヤクル、禊音碧砂を連れて来るんだよ。」
「あれ?でもこの世界でクロア言魂使えないよ?」
「イコちゃんも見ないね。」

と、いきなり部屋のドアが開いて黒髪の人が入って来た。目が合った瞬間に色んな事を思い出して思わずゼロさんの後ろに隠れた。

「ひっ!あ、貴方あの危ない人!」
「お前っ…!あの時の!よくも聖螺を…!」
「悪かったって…こっちにも事情があるんだから察してよ。それに呼んだのはそっちだよ。」
「え?この人呼んだの?」
「ゼロ、聖螺、鈴々も気持ちは判るがこいつも『脚本』の被害者だ。言わば悪役設定だな。」
「…で?その悪役が何の用だよ?そもそも何でこいつ正気な訳?あんなに発狂野郎だったのに。」

黒い人はゼロさんを睨み付けるとポケットから青白く光る言魂の銃を取り出した。

「Gemini…鬱音コアか。」
「使用中?何で?」
「…俺の『狂気』も『衝動』もコアが引き受けてくれた。八つ裂きにされる様な
 痛みを覚悟の上で。」
「え…?」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

コトダマシ-66.え?出来るぞ?-

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投稿日:2010/12/07 11:16:21

文字数:1,144文字

カテゴリ:小説

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