A
夏の朝に　睡らう君
窓に映る　無花果の実と
風は白く　遠くの蝉
香る露と　狼藉(ろうぜき)　日々


B
冷たい空　清純さを　嫌う　時と渚
雨が霽（あが）る　足跡照らす　ランプ　
響き　渡れ

C
青褪（さ）めた　ロベリア
朽ちる　衝動を　棄てた
綻（ほころ）びを　哀れむ　嘘と　嘗ての今
火を憑け　彩づく　果てに　緋色の澪
煌めく

眠らない　アベリア　
孤独　峯上（ほうじょう）の　怯者(きょうしゃ)　
曝け出す　渇望　縋る（すがる）　全ての痕
水面で　溢れる　甘い　雌黄（しおう）の恋
漂う


D
脳裡に浮かぶ　　君が縊死なら
僕も卑屈に　　　朽ちてしまふ
幼き恋も　　　　燃えてしまへば
玩具みたいに　　陳腐化して

君がゼレルに　　相違ないなら
波旬共でも　　　悟るはずで
奈落の底も　　　模倣的なら
其処に見えるは　理智の宿命

今も時計は　　　廻り続けて
叫ぶ閑（ひま）など　　　噸（まる）で無いけど
夢を見る度　　　想い出すから
虚飾の蒼槍（そう）で　僕を殺して

B2
近い過去と　遠い今が　滲む　涸れた　愉楽（ゆらく）
見渡しても　死ぬが時まで　空虚　
流る命

C2
冷え切った　カルミア
凍る　眼差しで　甘い
快楽を　乞う時　独り　世界に酔う
未来で　縺（もつ）れた　空に　浅緋（あさひ）の澪
流れて

燃え上がる　リナリア　
廻す　性慾の　独楽（こま）を
夢想家は　無辜（むこ）でも　稚拙　愉快な罪
素直に　色めく　非情　蘇芳（すおう）の愛
惹かれて


Ａ2
冬の宵に　睡らう君
窓に映る　暖炉の火と
淡く煙る　梁と刺繍
香る裡（うち）に　往昔(おうせき)　夢