( siGrEという曲から勝手に妄想して生まれた産物 )

設定のような、あらすじのような。小説化は時間的な面で難しいので、
とりあえずこんな風に解釈した奴もいるんだ、程度で軽く読んでくれたら
嬉しいです^^


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―――・・・


貴方と私の手のひらに
貴方は孤独を
私は愛を込めて
薔薇のような燃える帯で
固く固く運命を縛る
嵐よ 怒れる水のうねりよ
哀れな二人をもみくちゃにして
どうか最後にひとつにしておくれ―――



***



蓮は売れない詩人小説家。凛はそれを陰ながら支える愛人。(蓮には正妻がいる)
この二人はある嵐の日、濁流渦巻く川の中へと入水し、心中を図ろうとする。


*蓮は精神を病んでいるところがあり、躁と鬱を繰り返す日々を送っていた。
書いても書いても認められない。売れるのは時代の流行りだからと、無理やり書かされた三文小説ばかり。書きたいものも書けず、表現したいことも表現できない。周囲の文学人とも思想の食い違いから馴染めず、蓮は次第に心を閉ざしていくようになる。

自分の言うことは誰にも通じない。誰ともわかり合うことができない。世界は自分だけを置いてきぼりにして回り続ける。なんてちっぽけな人間なんだろう。なんて不要な人間だろう。蓮は失意のどん底を味わった。妻はそんな蓮を励ますが、その励ましが返って蓮の心を孤独にしていくのだった。


「死にたい」「でも孤独のまま死にたくない」


*凛は吉原の芸者だった。ある日酒の席で、他の者は文芸談義に花を咲かせているのに、一人だけ輪から外れて座る男が目についた。それが蓮との出会いだった。二人はそれ以降、何か口実を作っては会うようになり、1か月に1回が1週間に1回、1週間に1回が3日に1回、ついには凛の住む長屋へ頻繁に出入りするようになった。凛はこばまなかった。決して否定せず、蓮の荒んだ心を全身で受け止めた。

蓮のそばにいる時、凛は自分が蓮の「愛人」であることを片時も忘れたことはなかった。つまり、凛の頭の片隅には、常に「正妻」の存在があったのだ。
凛は、蓮が「正妻」よりも「愛人」である自分を重んじていることを知っていた。蓮が自分の妻よりも、自身を重んじる理由。それは、「正妻」にはできないこと、「正妻」が言えないことを、蓮がやってほしい、言って欲しいと願っていたからだ。

だが、所詮自分は愛人であり、仮の宿でしかないこともまた、凛は知っていた。凛は日向の恋にあこがれた。部屋の中で、行燈の光を頼りに囁き合う恋は、あまりに儚く色白い。太陽の下、例えば夏の緑の下を、蓮と二人で笑いあいながら闊歩できたなら…。
そんなささやかな願望も、夫婦という制約―――形あるものの前に、それはあまりに脆弱で。

凛はやがて、愛という実体のない言葉に、心を縛られていく。


「愛されたい」「だから、蓮の全てを受け入れよう」



*蓮は神経衰弱から、凛に心中を持ちかける。凛はそれに応じる。

その時蓮は、白紙の手紙を二通を目の前に置き、そのうちの一通を凛に手渡す。
「今夜、別の部屋で手紙を書こう。私は君に、君は私に。黄泉の国についたら、それを交換して読み合おう」
ええ、わかりました、と凛は笑う。これから死ぬというのに、それはそれは心の底から安らいだ顔だった。


しかし、濁流の中で二人は散り散りとなってしまう。
蓮は奇跡的に岸に打ち上げられていたところを助けられ、病院へと運ばれる。
凛もまた、蓮とは川を挟んだ向こう側の病院に運ばれたが、3週間後に自殺。


*

燃ゆる命の慟哭はとうに枯れ
今は色に散りゆく春なれど
水に映るスミレとハナサフランの
透き通った揺らめきに心を重ね
そっと手を伸ばす…水面が揺れる
摘み取る花は我が夢に見し春

*


お互いに、相手は死んで、自分だけが生き残ってしまったものと思っていた。だから凛は後を追うように自殺し、蓮はひとりでは死に切れずに途方に暮れた。蓮は凛の死後、凛の運ばれた病院の看護婦から手紙を渡され、凛が川の向こう側で生きていたことを知る。

蓮は、泥水に浸かってところどころ読めなくなってしまった凛の手紙を読む。
そこには二人で過ごした日々がいかに色鮮やかだったか、どれだけ蓮を愛しているか、それが自分にとってどれほど幸せかが書かれていた。一文字一文字を目に焼きつけながら、蓮は思う。君はもう、この世にいないのか、と。


「…あんまりだ。これではまるで、遺書じゃないか」
すっかり薄汚れてしまった二通の手紙を手に、蓮はただ、さめざめと泣くのだった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

siGrEから妄想【加筆版】

…というか、こういうのってアリですかね?今更ですが;
他の曲だと自己解釈されている方たくさんいらっしゃるんですが、この曲だけはなぜ…。だめなのでしょうか、あの2本の神PVから外れた解釈は…。

だめだったら消します。

*11/7 2回ほど加筆

閲覧数:876

投稿日:2009/11/07 23:55:45

文字数:1,963文字

カテゴリ:小説

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  • silma

    silma

    ご意見・ご感想

    初めまして。とても素敵な掌編だと思ったのでコメントさせて頂きます!
    siGrEといえば本家とアニメPVが特に有名ですが、
    曲と言うのは人によって解釈や受け取り方が様々ですので
    このにれぎるさんSSのような解釈も十分ありだと思いますよ!
    今度siGrEを聞くときにはこちらの解釈を思い浮かべながら聞いてみたいと思いました。

    2010/02/12 10:25:59

    • にれぎる

      にれぎる

      はじめまして、帝王イカさん!
      わわわわ…!ありがとうございます…!
      siGrEのPV動画は、どちらも本当に素晴らしいのですが、頭をリセットして本家の曲だけを聴いていると、どうしても妄想が一人歩きしてしまいます。こっぱずかしいことを言いますと物書きの血が騒ぐというかw他の曲のように自己解釈されている方を見かけないので、このメモを上げる時は、何か暗黙の了解みたいなものがあるのではないかと不安になりましたw

      ありですか、嬉しいです!
      むしろこんなメモ書き程度なのが申し訳なくなってきます;;
      追々ちゃんと物語にしたためてあげるつもりではいるのですが、なかなかorz
      この講釈を思い浮かべながらだなんて…!最高の褒め言葉です、ありがとうございます><

      2010/02/15 01:41:49

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