貴方たち人間は、私たちにとって短すぎる時間を生きて、そして消えていく。
とてもとても悲しくて、でも、それは同時にとても愛おしいこと。

今、何をしていますか?元気にしていますか?
マスター、私たちは今日も元気です。
泣いたり怒ったり、いろいろとあるけれど、私たちは元気です。
さみしい思いをしていませんか?
マスターは寂しがり屋なので、みんな心配しています。
もう、貴方はどうやったって帰っては来ないけれど。
それでもマスター、私たちは貴方のことが大好きです。
歌をくれた、優しくしてくれた貴方が、世界で何よりも大切です。
だから、今日も私たちは歌っています。
貴方がくれた歌を。
きらきらと輝く青空へ、貴方がいるであろうあの空へ。
雨の日も、雪の日も、いつだって。
どうか、この歌声が貴方に届きますように。
マスター、貴方へ届きますように。
私たちは今日も、幸せです。


 涙 空


意識が急速に醒めていく。
うっすらと目を開けて、周りを見る。
ここはどこなんだろう、とまだ目覚めきれない頭で思った。
白くて、とてもシンプルで綺麗な部屋。
窓からは陽光が溢れて、部屋全体に柔らかい印象を与えていた。
どうやら自分はベッドの上に寝かされているらしい。
浅葱色の自分の髪が腕に当たって少しくすぐったい。
体を起こそうとしたとき、向こうの方から足音が聞こえてきた。
近くにあるドアが開かれ、そこには女の人が立っていた。
部屋と同様に、見覚えのない人だった。
それでも、部屋に差し込んでいるのと同じくらいに優しい目をした人だった。
肩まで伸びた艶やかな黒髪に、細くてすらっとした体。
どことなく安心感を覚えさせるふんわりとした雰囲気はとても好きだった。
「あの……」
「目が覚めたのね、おはよう!!」
にっこりと笑いかけてくれてちょっと緊張していたのがほぐれた。
笑うと、見た目よりも少し幼く見えるのが可愛かった。
「貴方が、マスターですか?」
「うん、そう。よろしくね!!」
そう言って差し出された手を握り返すと、マスターは再度笑いかけてくれた。
何だかそれが、嬉しかった。
この人がマスターなんだぁ、と思うとこれからの生活が楽しみだった。
どんな歌を歌わせてくれるのかな。
どういう歌が好きなのかな。
自分を好きになってくれるかな。
満足させてあげられるかな。
期待と不安でいっぱいになって、胸が苦しくなるくらいに楽しみだ。
「さ、これが私の家。気に入ってくれると嬉しいな」
手をひかれてマスターの家の中を巡る。
伝わってくる温もりが、何だかとても尊いものに思えた。

ライセンス

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涙空 (1)

閲覧数:148

投稿日:2010/05/16 23:47:12

文字数:1,084文字

カテゴリ:小説

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