足元がぐにゃりと沈む様な感覚の後、私達は今度は駅前に居た。

「あ…れ?ここ、ウチのお店の近くだ。そんなに離れてないね。」
「そうだな、見覚えがありまくりと言うか…。」

安心交じりに辺りを見ていると、いきなり耳元で大きな声が聞こえた。

「二人とも大変だ!すぐ大通りのスクランブルまで走れ!」
「わっ?!何?!」
「時間が無い!とにかく急いでくれ!」

キーンとなる耳を押さえつつ只事では無さそうな様子に私達は大通りへと走り出した。

「何なんだよ?一体…。」
「よく聞け、鈴々、その世界のクロアはお前が居なくなってショックを受けてる。そのままでは
 クロアはトラックに撥ねられて死んでしまう!どんな手段を使っても良い!クロアを助けろ!」
「なっ…?!」
「嘘でしょ?!だって…私が居なくなったからってそんな…!」
「そんな事は助けてから本人に聞け!急げ!」

幾徒さんの声は凄かったけどそんな物は頭から飛んでいた。クロアが死ぬ…?そんな…そんな事…!

「うわぁあああああっ?!化け物――ッ!!」
「―――っ?!」
「ひぃいい!来るなぁ――!!」

パニック状態になった人の群れが雪崩みたいにこっちへ押し寄せて来た。逃げて来る人の流れの先には特撮よろしくの文字化けの姿が見える。

「マジかよ!こんな時に!」
「痛っ…!通して…お願い通して!」

混乱した人達は悲鳴を上げながら逃げ惑ってとても話が出来る状態じゃない。どうしよう、どうしようこのままじゃクロアが…!

「グヒャハハハハハハハハ!!キャーッハッハッハッハ!!」
「『生成』『氷塊』『誘導弾』!!」
「ゼロさん?!」
「走れ!こっちは引き受ける!」
「でも…!」
「速く!」
「判った!王子様!」
「王子様って言うな――!!」

人の流れに必死で逆らって走った、時にはぶつかったり突き飛ばされそうになったりしたけどそれでも必死で走った。嫌だよクロア…死ぬなんて…そんなの絶対に許さないよ!助けてみせる…絶対助けてみせる!

「…クロア…?!」

薄暗くなった交差点を、上の空でフラフラと歩く赤い髪を見た。その瞬間、信号が点滅から赤に変わった。

「危ない!」
「え…?」

駄目…装填が間に合わない…!クロア…!

「…アクセス…!」
「――っ!!」

声と同時にトラックが見えない壁にぶつかって止まった。物凄い音と、人の悲鳴とが喧しい中で、クロアを見るブロンズの髪が目に入った。…誰だろう…?あの人が助けてくれたの…?そうだ、クロア!クロアは…!

「クロア!」

振り返るとクロアは放心したまま数人に囲まれて引き摺られる様に連れて行かれてしまった。多分私達を監禁した奴等なんだろう…。そこに私や聖螺ちゃんも…。

「鈴々!クロアは無事か?!」
「うん…大丈夫…連れて行かれちゃったけど…ちゃんと生きてるよ。」
「二人共、クロアの時間修正は以上だ。10秒後にこちらへ転送する。」
「了解。」
「判りました。」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

コトダマシ-71.絶対に許さないよ-

運転手ちゃんと生きてます。

閲覧数:68

投稿日:2010/12/12 01:12:39

文字数:1,238文字

カテゴリ:小説

クリップボードにコピーしました