「そんなに…使うことあるんですか」
「んー、内緒」
内緒、だなんて。誤魔化すのが下手くそですね。使うことなんてないくせに。手錠だのなんだの、誰かを縛るものばかり集めて。そんな相手、貴方にはいないでしょう。誰かを繋ぎとめたいがばかりに、物に頼って安心しようと必死なのでしょう。誰にでも近づいて誰でも縛りそうな見た目のくせに、実はとても臆病で憐れで、とても可愛い。ねえ、孤独とプライドにずたずたに引き裂かれて、それってキモチイイ?
「なに笑ってんの?」
「え?…笑ってないですよ」
どうやら感情が隠せていないらしい、危ない危ない。僕はとても臆病で憐れで、可愛い人を演じているのだった。忘れちゃいけない、僕は貴方に依存してもらうために、貴方の心の鏡になっているのだから。無意識に自分そっくりの僕に依存してくれたら、もう僕のもの同然でしょ?ああ、駄目だ、また嘲笑ってしまう。ふふ、そんなに見つめないで下さいな。
縛る相手が存在するふりをして、縛る相手を探すふりして、縛られているのは自分自身だということに、貴方はいつ気づくのだろうか。いつまで気づかないふりをするのだろうか。
ねえ、早く落ちて下さいよ、僕の所まで。誰も愛せないと、誰にも愛してもらえないと嘆いて下さいよ。僕と、貴方を、運命の赤い糸で繋ぎましょう。
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