小さい頃 夢の中のボクはヒーローで
ワルいやつを倒して
ヨワいひとを守って
誰よりも 何よりもカッコイイ
物語の主人公だった
でも起きたらボクは女の子で
ワルいやつにあしらわれ
ヨワいからと守られて
少しだってなんだって
かっこよくなかったんだ
誰かを守りたかったのに
ボクの前には誰かの背中が必ずあった
誰かを助けたかったのに
手を差し延べられるのはいつも自分だった
夢の中ではいつだって
天下無敵のヒーロー・ガール
目が覚めれば解ける魔法
ただの無力なお転婆少女で
終わってしまうんだ。
頼んだわけでもないのに張り付く背中が邪魔で、
ボクはそれを蹴飛ばした。
守る人も居ないから、
ただ強くなりたくて独りになった。
「もう誰にも守られたくない」
「もう誰の助けもいらない」
ヒーローガールが手にいれたのは、
そんな自分自身を守る盾だった。
傷付かないココロを得た少女は、
とうとう天下無敵になった。
誰も敵にならない代わりに、
誰も仲間にならなかったから。
そんな孤独な少女が哀れで、
手を差し延べた少年が居た。
その優しい姿は、まるで少女の憧れた主人公みたいで、
(私は誰にも助けは乞わない)
↓焦燥する胸を抑えた、
(守るべき私は守られてはならない)
↓捩られた信念が擦り切れて、
(その秩序を破る彼は「敵」だ)
↓信じていた盾が、崩れる音がした。
少女はその手を払いのけて、少年を―――
(人を攻撃するのはワルいやつじゃなかったか?)
(ワルいやつは倒すべきじゃなかったか?)
(つまり、つまりボクは―――!)
少女は気付く。
いつの間にか過ちを冒していたことに気付く。
小さい頃夢見たヒーローから遠く掛け離れた今の自分は、
消えてしまうべき悪だということを。
誰かを守りたかったのに、
誰かを傷付けてしまっていた。
誰かを助けたかったのに、
誰かが伸ばした手の平を弾いて。
ヒーローでもない一人の少女は、
少年に謝ることすらできずに、
ヨワいヨワい少女らしく、
ただひたすらに泣くしかなかった。
そんな少女のほっぺたを、
少年はすっと撫でてくれた。
それは本当に奇跡だった。
少女はやっと口を開くと、
数年ぶりの言葉を彼に告げる。
「ありがとう」
それはそれは後のお話。
小さな頃のヒーローガールは、
優しいヒーローと共に世界の平和を守っているのでした。
おしまい。
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