「あぁ不愉快、煩わしい。今後一切、私の前でその名前を私語に吐かないで。だからがっかりって言ったのよ、田舎者は礼儀がなってない、礼が足りない!儀が足りない!本当にしょうもないわね!『尾張』育ちの田舎者なんて縁起が悪いったらないじゃないの、言わせないで恥ずかしい!」
「はぁ、言ってくれますね」
「それきた、やれきた、流れ星」
「史勇馬、お静かに」
「まぁ、いい顔をなさる。何か文句でも?」
「お言葉が過ぎやしませんかね、って話です、総理。戦国時代を席巻した男達が揃い揃って尾張国の生まれだと、懐古主義の総理が存じぬはずがありますまいに。御国の平和を守るのが私のお仕事。聴く耳持たねぇ長の御守なぞ、おれ;軍人の仕事じゃなかろうに」
「仕事に文句があるならいつでも替えてあげるわよ、張った尾巻くのも今の内よ?」
「お生憎、俺や田舎者なんでね、帝都の土産をたらふく集めるまでは早々帰れねぇんだよな、これが。巻く尻尾もねぇからのんびりやらせてもらうぜ。で、任務と前任者からの申し送り事項は誰かから頂けるんかい?前任者との打ち合わせはあるのかい?田舎者には如何せん帝都の空気が身に堪えて仕様がないのさ。特にこの部屋。人間の腐った匂いがすらぁ」
「っこのd」
ガタン。
「…何よ百合李」
「任務と申し送り事項は此方の資料に記載されておりますが、設立間もない部隊ですので資料もわずかで御座います。重ねて、資料後付に御座います要注意人物『桜軍服』について、桜軍服の率いる学連および学連過激派の活動につきまして私から説明させていただきますので、どうぞ此方へ。それでは失礼致します」
「お、おい、まだ話が、おいおいおいおいって!」
ガチャン。
「っはー、相も変わらず馬鹿が多くて困るわね、本当に」
「馬鹿も挽歌も後は退くのみ。馬鹿は轢くのみ、挽歌は弾くのみ。馬行く道は牽かれ行くのみ、と」
「下手な韻律をやめなさい。まぁ、脳がないから仕様がないんだけど」
「能もないならしょうもない」
「黙れ!」
「失礼いたしました、と」
「まぁ、これで警備は大丈夫ね。学徒のデモが昼間にあるのは、国会が昼間にあるから。声は届くから上げるのであって、届かない声に意味はない。だったら昼の国会を矢面にして、夜間に国会をして安保の成立を急げばいいだけのこと。国民には分からないわよね、内閣も議員共も学徒も、今此処に関する者全てを煙に巻きつつ、日本を真の勝者とすべきプロット;御芝居に、この世の全てを巻き込んであげるわよ」
「見せざる、聞かせざる、言わせざる。徹して通すは網目笊。日本の未来はいかがなさる?」
「鬼畜米英なんのその。与し易しと野放しにした日本の成長に目を見開き、恐れおののけばいいのよ。いつかその国旗に、敗戦国に負けたというれってる;名札を貼ってやるわよ」
「さすがは総理、日本の未来はあんたのもんだ!」
「重いほど、頭を垂れる稲穂かな。私の野心は何より重いわよ。そう簡単に刈り取らせやしないわ」
「時に総理」
「何よ」
「五輪開催に向けましての都心環状線建設計画、それと御所付近一帯の整地・建設計画経過報告をばこちらに」
「仕事やってんじゃないのよ!」
【十一項目】二次創作小説『近代歌姫浪漫譚 千本桜 ~学徒が華ぞ咲きにける~』【胡蜂秋】
黒うさP『千本桜』の自己解釈・二次創作小説です。
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