休日を挟んで登校するや否や、煩い声が聞こえた。
「おい蕕音!蕕音流船!聞いているのかこの不埒者!」
「聞こえてる…後不埒者って何だよ?」
「蛟音さんが入院したと言うのは本当か?!」
「えっ?!聖螺が?!何時?!病院何処だ?!」
「フッ!何故俺がライバルに情報を与えなきゃならん!聞きたければ星様教えて下さいと
手を着いて懇願を…。」
「良いから何処だ!」
「ちゅ、中央病院…。」
「…一体どうして…。」
「何でも街中で妙な化け物が暴れていたのに巻き込まれたらしい。妙な字のある化け物が
最近よく出ていると言うしな。」
「字…?お前も見えたのか?」
「その化け物をか?遠巻きに見た位だな。」
「…判った…。」
聖螺が怪我…妙な化け物って言うのは多分文字化けの事だろう。自分より他の人に危害が及ぶ方が余程キツイな…。だけど端から幾徒に保護して貰う訳にも行かないし、何とか被害が出ない様にするしか無いな…。溜息を吐きながら中央病院へと足を運んだ。不安が拭い去れなくて落ち着かない。
「聖螺って…誰?彼女?」
「いや、幼馴染だけど。」
「…私ロビーで待ってるね。面識も無いし。」
「芽結?でも離れない方が…。」
「平気だって、いざとなったら私も戦えるもん。」
芽結はそう言うと手を振ってロビーへ歩いて行ってしまった。気を使ったと言うより今のは…。
「やっぱり避けられてるよな…。」
昔のクセなのかは判らないが、何か抱いて寝ないと落ち着かない。だからって一度やならず二度までも抱き枕代わりにしたなんてそりゃ怒るか引くよ。今度ちゃんと謝ろう…。病室のある階に着いた所で壁際に立つ女の人を見付けた。思い詰めた様な表情で病室のドアをじっと見ている。
「あの…入らないんですか?」
「え?ええ…。」
一瞬こちらに目をやったが、また直ぐドアの方に向き直った。何なんだ?病室に用が無いなら一体何の為に…?まぁ、気にしても仕方無いので放って置いて病室に入る事にした。部屋はベッドこそあるが他に患者は居なくて個室状態だった。聖螺はベッドの上でぼんやりと窓の外を眺めていた。
「聖螺。」
「…流船…、お見舞い来てくれたの?わざわざありがと…。」
「さっき家の方に電話したけどおばさん達の付き添い断ったんだって?一人で平気?」
「うん。ちょっと切っただけだし、足も捻挫だから直ぐ治るって。お店だってあるし
この位平気だよ。」
「本当に?何かあったらちゃんと言えよ?頼流が良いならそれでも良いから。」
聖螺は力無く笑っていた。よく見ると少し目が赤い。明らかなカラ元気。だけど俺はどうする事も出来ないでいた。
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