初めてあの花を見たとき僕は、その花に心を惹かれた。
その花は気弱そうで、いつ自然消滅してもおかしくないように思えた。
その花言葉は地域によって様々だ。
「幻」「恋心」「自滅」「孤独」「病」「一途」「絶望」「後悔」など。
他にも花言葉は沢山ある。
しかし、地域が変わっても変わらない花言葉があった。
それは、「信用」だ。
僕はあの花を見て以来、あの花以外興味を示さなくなった。
ひと目でも良いから見たい。願わくば自分の家に持ち帰り、側においておきたい。
そう思った。
そして、僕はその花が現存している場所に行く準備をした。
何年かかったかわからない。
でも、やっと準備を整えた。
だから、僕はその場所に向かう。
一×××年×月××日(火)。
やっと、あの花がある村についた。
今は夜。
宿の部屋から見える星が綺麗だ。
野宿になることはないのでほっとしている。
野宿のほうが夜空が綺麗なのは言うまでもないが、襲われる可能性が限りなくゼロに近いほうがよっぽど良い。
すこし前まで酒場に居た。
そこで、あの花の事を聞いてきた。
酒場に居た男達の話によると、この村に外から来る人のほとんどがあの花を見に来た人らしい。
まぁ、こんな秘境な村に目的を持って来る人なんてやはりあの花が目当てなんだろう。
僕は村の外の話と引き換えにその花の事を聞いた。
ほとんどが僕の知ってる内容だった。
「満月の深夜が最も綺麗に見える」
「月が雲に隠れたら絶対に見ることは出来ない」
「絶対に一輪しか咲かない」
「長時間その花を見ていると精神が不安定になる」
「その花を見て、無事に帰ってきた者は極僅か」
そんな知ってる内容の中に所々初めて聞く内容があった。
「この村での花言葉は『手遅れ』『命の儚さ』『願わぬ思い』だよ」
「この村であの花は『今麗蓋(コンレイカイ)』と言うんだよ」
「あの花はこの村に住む魂のようなものさ」
「あの花あってこの村在り。と言えるね」
正直、最初は嘘だと思ってしまった内容があったが、そんなことは今となってはどうでもいい。
嘘か真実かは、自分がその目でちゃんと確かめればいいのだから。
さぁ、明日のために今日はもう寝よう。
明日の夜は満月だ。
明日の夜、あの花を見れるのだ。
気分が高揚してなかなか眠れそうにない。
でも、寝ないといけないんだ。
明日のために。
あの花の為に。
夕日が綺麗だ。
僕は今、山の中を縫う細道を歩いている。
目的の場所、あの花がある場所までもう少しだ。
足元に注意しながら、前に進む。
一歩足を滑らせれば、死ぬという訳ではないが、なかなか怖い。
まぁ、死ぬことは無いだろうけど、この道に戻るのにかなりの労力が必要になるだろう。
どんどん、日が暮れていく。
あたりがゆっくりと、しかし確実に暗くなっていく。
僕はふと、村人に言われたことを思い出した。
「日が完全に暮れるまでに細道を抜けること。抜けることが出来なかったら、絶対にその場で朝が来るまで待つこと。そうしないと絶対に死ぬよ」
つまり、夜を迎えるまでに細道を抜けて、目的地に付けなかったら、次の満月まであの花を見るのはお預けということだ。
そんなことはしたくない。
僕は少し急いだ。でも慎重に慎重に進む。
ついに太陽が地平線に隠れた。
あたりは真っ暗だ。
月も雲に覆われて見えない。
僕は細道をなんとか抜けることに成功した。
そして、細道の終着地である目的地に付いた。
だが、真っ暗で何も見えない。
月光があれば見えるかもしれないが雲に覆われてしまって光が遮られている。
運が無かったのだろうか。
それとも、これが結末なのだろうか。
花が僕に見せることを拒絶しているのだろうか……。
わからない。
でも、これだけはわかる。
このまま月が雲に隠れ続けたら今までの苦労が水の泡だということが。
時間がどんどん過ぎていく。
それに連れて僕の心のなかを絶望が埋めていく。
そして、僕がもうだめだと諦めようとした時。
村人の物語を思い出した。
絶対に覚えておけと言われた物語だ。
この村に代々伝わる物語。
「一人の少年が一人の少女に恋をした。
その少年にとって少女は高嶺の花の存在だった。告白しても振られる事が目に見えていた。だから、少年はずっと告白できなかった。振られて、一生少女と話せなくなる事が怖かったから。最後の一歩を踏み出せなかった。
少年が少女に恋をして三年が経った。少女は重い病気を患ってしまった。この町にいる誰もが少女を助ける術を持っていなかった。
少年は少女を助けようとした。だから、少年は一所懸命勉強をし、助ける術を身につけた。でも遅かった。
少女は自宅で誰にも看取られず静かに息を引き取った。
少年はもう少し早ければと自分を恨んだ。日が経つごとに少年の自己嫌悪は酷くなった。
少年が少女に恋をして四年、少女が少年に埋葬されて四週間経った。
少年は少女が埋葬されている墓石に横たわるように死んだ。
少年と少女が居なくなって数百年経った。
二人が旅立ったその場所には一輪の花が満月の夜に綺麗に咲き誇っている」
正直、この話を聞いたとき僕は、あの花を見に行っても良いのかと思ってしまった。
悩んでしまった。
まぁ、一度、原点に回帰して、見に行くという決断をしたのだが。
……。ふと気がついた。
満月が綺麗に夜空に浮かんでいることに。
そして僕は見つけた。
草原の中で月光を浴びている墓石と一輪の蒼い花を。
月光に映る蒼い花は僕が初めて見たものよりもとても綺麗で、美しく……、これ以上の表現が出来ない……。
僕は更に蒼い花に近づく。
蒼い花に引き寄せられているのだろうか。
ただ、もっと近くで見たい。そう思ったのだと思う。
僕は蒼い花に目と鼻が触れれる所まで近づいた。
僕の頭の中は蒼い花の事でいっぱいだった。
何故か涙が溢れ出てくる。
その涙が、土を蒼い花を濡らす。
嗚呼、なんでこんな感情が今になって蘇るんだ。
これもすべて、あの物語やこの蒼い花が原因なのか……?
なんだろう……。昔、あの頃が懐かしい。
……あの頃に戻りたい……。
僕は蒼い花の横に寝転がった。
目の前には満月と夜空が広がる。
横を見れば蒼い花と墓石。
「一生、ずっとここにいてもいいな。
いっそ死んでしまうまで」
ポツリとそう呟いてしまう。
風が少し吹いてきた。
風が草原を揺らす。
そして、それにつられるように隣から甘い匂いがした。
僕がそれに気がつくのと、意識が無くなるのは同時だった。
×××年十二月二十日。
あの時、僕はレインを助けれなかった。
レインは最後まで一人ぼっちだった。
僕が助けるべきだったのに、助けれなかった。
ごめんなさい。
僕が悪いんだ。
こんな僕がレインの埋葬を任されるなんて、神様は何のつもりなの?
僕を虐めてるの?
もういいよ。
僕はもうあの町に戻らない。
ずっとレインの隣にいる。
助けれなかった償いにもならないだろうけど、僕はずっとレインの側にいる。
僕が隣にいていいのなら、レインの隣にずっといたい。
もう、一人ぼっちじゃないんだよ。
レインは一人ぼっちじゃない。
そうだ……。
レインが一度見てみたいって言ってたこの蒼い花はどうしよう。
名前はわからない。
この蒼い花もレインの元に持っていけばいいのかな?
それともレインの隣に植えてあげればいいのかな?
レインなら「植えて」って言うよね。
そうだよね。
じゃぁ、ここに植えておくね。
僕が、レインが生きていた最後の証だもんね。
何時まで残っているのかな。
僕達のこと、忘れないでね。
僕達が生きた証、ここにあるよ。
高嶺の花
部活動の提出品の一発書き。
ら抜き言葉とか誤字脱字等あるはず・・・
今麗蓋(コンレイカイ)なんて花無いでしょう。
おもいっきり自分が想像でで作りました。
しゅ、週一ってできれば週一で投稿したいって意味だから!
久々の更新ネー
これ、もう少し磨くなり、捻ればもっといい作品になるキガス・・・。
作品の改変はあまりしてほしくないけど、改変許可にしてみます
最悪、再投稿すればええねん・・・
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