……長く続いた戦乱の時代が終わり、時は徳川公の治めし天下泰平の世。力を付けた豪商達が贅沢の限りを尽くしている今日この頃、巷は一人の女盗賊の噂で持ち切りであった……
一陣の風の如く空を翔け、微かな風切りの音と共に颯爽と宝を盗み去る、神出鬼没の朱き影。
ある時は百姓、またある時は旅の坊主。闇に忍び、華麗に人の目を欺く変幻自在の朱き影。
人々は、そんな彼女をこう呼んだ……闇夜に咲きし華麗なる華『咲音ノ冥(さきねのめい)』と……
「曲者だ!者共出合えっ、出合えーいっ!!」
草木も眠る、丑三つ時。昼間とは打って変わり水を打ったように静かな江戸の町に響く、遊戯の始まりを告げる声。私はそれを合図に、地を蹴り颯爽と駆け出した。
「追え!逃がすな!」
「屋根だ!屋根に登ったぞ!」
私は地から屋根へと跳び移り、騒ぎ立てる男共を尻目に瓦の上を疾走する。夜風を切り裂き向かった先は、とある豪商の蔵。今夜は、そこの宝である銘酒『鈴蓮』を頂戴するのだ。
「ひ……い、いいいつの間に…うぐっ!?」
屋敷の庭に降り立った後、私は見張りの男に当て身を食らわせて黙らせる。
「どうした!? むっ、何奴…ぐあっ!」
鍵番の男には回し蹴りを当てて、同じ様に昏倒させた。そして男から鍵を奪い、私はまんまと蔵の鍵を開ける事に成功する。
「えーっと……あ、あったあった!」
蔵に侵入した私はすぐに目的のモノを見つけ、それを懐にしまい込む。だがその直後、バタバタと慌ただしい足音が聞こえ、蔵の入口に数人の男達が姿を現した。
「逃げ道は無いぞ! 今日こそ御用だ、咲音の冥!」
男達はじりじりと私に近付いてくる。その様子を見て、私は不敵に微笑んだ。
「な、何が可笑しい!!」
「残念、今日も私の勝ちだね。岡っ引の旦那ぁ!」
刹那、私は男達に煙玉を投げ付けた。瞬く間に辺りが白煙に満たされていく。
「な……ゲホッ、ゲホッ! く……卑怯だぞ、咲音の冥!!」
男達は突如発生した白煙に咳込み、私への注意がほんの一瞬だけ、完全に逸れる。その隙に、私は沢山の男達の中に紛れ込んだ。勿論、馬鹿な男達は気付きもしない。
「……いない…だと……!?」
煙が晴れ、私が既にそこにはいない事を確認した旦那は、呆けたように呟いたのだった。
コメント3
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ご意見・ご感想
風刻
その他
鈍痛さん
感想有難うございます。
これから色々と進展する予定ですので、また見に来て頂けると嬉しいです!
2009/01/24 15:29:41
痛覚
ご意見・ご感想
読んでますよ、読ませて頂きましたとも!!
盗賊MEIKO、しかも酒目当て(笑
これからの展開にドッキドッキです^^
それでは続き楽しみにしてます!!
2009/01/19 01:46:35
風刻
ご意見・ご感想
感想ありがとうございます。
上手いだなんてとんでもない!他の皆様と比べれば私なんてまだまだ未熟者です。
ラストは・・・・うーむ、考えてはいるんですけど、どうも話がまとまらなくて・・・・
もっと精進します。
2009/01/13 20:33:22