第三章 記憶を継ぐ者
何年かがすぎて、ある日
一冊の原稿が古書店で見つかる
手書きのまま、綴じられもせず
「ひとつのしっぽと、三十の朝」と書かれたそれは
まるで誰かに届くのを待っていたかのようだった
読んだのは若い詩人の卵
本屋の棚の隅、猫に引かれるように手に取った
読み終えたあと、
彼は何も言えずにただ、
カフェのテーブルに両手を置いた
なぜか、涙がこぼれていた
言葉のあいだから
“何か”が確かに流れていた
その晩、彼の足元には
見知らぬ猫が座っていた
不思議と、懐かしいような目をして
ただ、そこにいた
そして彼は、ペンを取り
こう書き始めた――
これは、ある猫と、ある男と、
世界の片隅にひっそりとあった、あたたかな日々の記録である。
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