こんにちは!中上慶之輔です。
足元に広がるのは、見渡す限り重なり合った古い針金と金属の骨格でした。かつて巨大な音を鳴らしていたはずのその場所は、いまや風が吹き抜けるたびにかすかな唸り声をあげるだけの巨大な洞窟のようです。
私たちは、この巨大な楽器の腹の中で、息をひそめながら次の音符が生まれるのを待っています。
遠くの暗がりで、ぽつりと雫が落ちる音が響きました。その小さな衝撃は金属の骨組みを伝わり、波紋のように足元から全身へと広がっていきます。一本の針金が震えると、隣り合う別の針金も呼応するように小さく響き始めます。誰も指を触れていないのに、空間全体がまるで意志を持ったかのように調和したメロディを紡ぎ出していくのです。
ここに届く音は、かつて誰かがどこかで吐き出した寂しさの残骸かもしれません。捨てられた感情や、誰にも届かなかった言葉たちが、長い時間をかけてこの地下へと流れ着き、静かに沈殿しています。私はそれらの欠片を拾い上げ、壊れた琴線にひとつひとつ結びつけ直す作業をしています。
ほどけた糸を結び直すたび、小さな火花のような光が散り、無音だった空間に新しい鼓動が宿ります。それは叫びのようであり、子守唄のようでもあります。完璧な旋律などここには存在しません。歪んだ音と歪んだ音が重なり合うことで、見たこともないほど歪で美しい世界が立ち上がっていくのです。
外の世界では、誰もこの腹の中で起きている奇跡に気づきません。人々はただ、耳の奥でかすかに聞こえる地鳴りのようなものを感じ取り、今日がいつもより少しだけ切ない日だと錯覚するだけです。
もしもあなたの胸の奥で、理由のないざわめきが生まれたなら、それは私たちが張り巡らせた針金が、あなたの心と共鳴した証拠です。世界は一瞬の静寂を恐れるように、いまも新しく生まれ変わる音を求めて、静かに蠢き続けています。
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