魔王の国の魔王の城に
一人の魔王がおりました
ひと月に一人 その魔王は
人間を食べておりました

336552人目の生贄は
銀色の髪に青い眼の
18才の青年でした

魔王は震える青年に
小さな砂時計を与え
いつも通りの決め事を
そっと静かに伝えました

「一ヶ月後の今このとき
わたしは君を食いころす
それまでの残り時間が、ね
君の砂時計の砂なのさ」

時計を手に取りその青年は
考え込み魔王に言いました
「欲しいものがあるんだ、それは
大きなカンバスと七色の絵の具」

そんなことなら容易いさ、と
魔王は道具と場所を与え
青年はそれに絵を描き始め
遠くから魔王は眺めました

青年の命の砂が
少なくなっていくにつれて
白かったカンバスは
命を得ていくように見えました

「おまえはどうして絵を描くのだ」
魔王は青年に聞きました
青年は笑って答えました
「最後まで自分でいたいから」

青年が魔王に捧げられた
あの日から約一ヶ月
青年の絵はあと少しで
出来上がろうとしておりました

あと5日 あと4日
あと3日 あと2日
あと少し もう少し


「あんたにあげるよ
この絵
おれの人生だ」



魔王の目の前に広がった
その光景を見て魔王は
「おまえの人生しかと見届けた
これからは新しい日々を共に生きよ」

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魔王と青年

物語風にしました。

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投稿日:2017/09/05 15:23:32

文字数:560文字

カテゴリ:歌詞

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