子どもの頃から一緒ずっとだった男と香織。
2人の住む地域は人家よりも田畑の方が多い、山間にある田舎。街からは離れているが、ライフラインは整っており、最近は光ファイバーのインターネット提供エリアにも入っている。
車を少し走らせれば買い物に不自由しない程度の街があるが、子どもが自転車を漕いで行くのは難しく、街は遊園地のような存在だった。
男と香織は家が隣同士ではないが、この狭い田舎では珍しく同い年だということで親が仲良しになり、その影響で子どもも仲良くなっていった。
もちろん保育園も同じで、家に居ない時はだいたい2人で仲良く遊んでいた。

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 同じ小学校に進学し、同じ通学路を一緒に歩いた。どちらかが寝坊をすると、片方が家まで迎えに行っていた。
小学校といっても分校で、何百人も在校している学校のように校舎は大きくない。全校生徒も男たちを含めて20人程度。みんな同じ地域の子ども達なので、仲良くなるのにそれほど時間はかからなかった。

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 それから数年、仲良くしてくれていたお兄さんお姉さんたちが中学校に進学してしまった頃。登校から下校までずっと一緒だった2人が疎遠になっていった。
今まではお互い他に遊び相手がいなかったが、今は同じ学校の同じ性別の遊び相手がいる。
男は外で野球や探検をしたかった。香織は家でお人形遊びなどがしたかった。綺麗な洋服を汚すような遊びには賛成してくれない。
疎遠だからといっても仲が悪くなったわけではなかったが、男の子たちの間では”女の子と遊ぶのは格好良くない”という雰囲気があり、女の子集団も”男の子の遊びは乱暴だ”という雰囲気があった。

 それでも七夕の日だけはみんな一緒だった。
保育園からの恒例で、学校行事というよりは地域のお祭りのような感じ。
お祭りと言っても夜店が並び、たくさんの人が遊んでいるというようなものではなく、笹を山から取ってきて学校などに飾る。ただそれだけの行事。
しかし、普段は入れない山の奥にまで大人たちと一緒に行くのはちょっとした冒険。男の子たちは大興奮で笹を取りに行き、女の子たちは折り紙を切り貼りしたオリジナル笹飾りを誰が1番綺麗に作れるかと必死になっていた。
なぜか泥んこになった男の子たちが戻ってくると、たくさんの笹飾りと短冊が作られていた。
飾る場所は、小学校と保育園の2か所。男と香織が保育園の時も、当時の小学生が笹と短冊などを持ってきてくれていた。
こんな日ばかりは男の子も女の子も一緒になって笹飾りを付け、短冊に願いを込めた。

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 そんな楽しかった小学校も卒業を迎え、来春からは中学生になる。初めての制服に袖を通し、ちょっとだけ大人になれた気がした。
中学校は近くになく、2人ともバス通学となった。毎朝一緒のバスに乗っているはずなのに、交わす言葉は「おはよう」という挨拶のみ。男女の体の違いも如実に現れ始め、お互いに喋ることすら気恥ずかしかった。

 「お前好きな女子いるのか?」という何気ない会話に「香織ちゃん!」と元気に答えていた低学年の頃の男。中学生になっても同じような会話にはなるが、答えは決まって「いないよ」だった。
”好き=仲良しの異性”だという幼い頃とは違い、今では”好き”という言葉を発する事は、とても恥ずかしい事だった。それと同時に、”好き”とはなんなのかと悩んでいた。それは男だけでなく、香織も一緒。
男が女子の体に興味があるのは思春期を迎えれば誰でも同じで、女も同じく男の体に興味がある。相手が好きな相手でなくても、異性と話す事は恥ずかしい年頃なのだ。

 男女には体の造りに違いがあるという勉強もあり、男女で別々になる事が多かった。
接する機会が減ると、たとえ幼なじみで昔から仲良しだったとしても、更に疎遠になり朝の挨拶すら交わす事はなくなっていった。

 受験という事を意識し始めた頃。その日のバスは珍しく混んでいて、2人並んで吊革に掴まっていた。
2人はお互いの顔は見ずに、流れる景色を眺めながら話を始めた。
昔はいくらでも話せていたが、今の共通の話題といえば受験の事だけだった。
志望校は?どのぐらい勉強してる?塾とか行くの?部活はどう?
会話というよりは一問一答で、お互いがお互いの質問に答えていくだけ。全く盛り上がらなかった。
男はどこか寂しいような気分になりながら、バスを降りた。

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 卒業式当日。香織は校舎裏で後輩であろう男の子に告白をされていた。
偶然みつけてしまった男だが、会話の内容は聞こえてこない。聞こえても不思議ではない距離なのに、男の耳に会話は入ってこなかった。
こんな所を見てはいけないと、男はその場をすぐに立ち去り教室へと戻った。
教室に戻っても、上の空だった。周りからは卒業式を控えて感傷に浸っているように見えたかもしれない。
しかし男の頭の中にはさきほどの光景がこべりついていて、卒業式どころではなかった。
なんだかモヤモヤ。よく分らない感情が心の中に残り続けたまま、中学の校舎をあとにした。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

幼少~中学卒業まで

プロットのようなもの。

主人公の名前はまだ決めかねています。
内容は中学卒業までサックリと書いてあります。物語にしても、たぶんこれ以上の内容は出てこないと思います。

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投稿日:2016/05/16 16:51:37

文字数:2,084文字

カテゴリ:小説

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