窓の外は大きな飛行機がまるで鳥のようにざわめいていた。当たり前のようだがラジオで言っていた「落ち着いて行動してください」云々は無視して、渋滞となっていた。エネは自転車に乗り込もうと思ったが、その渋滞を見て一つ舌打ちをして、歩くこととした。
「……ヘッドフォンでもつけるとするか……」
エネは常にと言ってもいいほどヘッドフォンをつけている。それが彼女のアイデンティティーであり、オリジナリティーでもある。
音楽を聴こうとエネはiPodを手にとったのだが――。
すでにノイズが響いている。
「……どういうことだ?」
エネは不思議に思ってiPodのディスプレイ画面を眺める。それでも、そこには見覚えのないものが描かれているだけだった。
『No.007 Title;Enemy Actor;???』
「……どういうこっちゃ。なんでアーティストじゃなくてアクターなんだ?」
エネはそんなことも思いながらも、ふと耳を澄ましていると。
「――聞こえる?」
エネの耳に届いたのは――彼女に良く似た声だった。
強いて間違いを言うなら、少しだけ透き通っているくらいだろうか。
「……誰だ?」
「ねえ。今日地球が滅ぶのはニュースで知ってるよね?」
「……ああ」
「それじゃあ、さ。聞くよ」
「――生き残りたいでしょう?」
彼女の耳にははっきりとそう聞こえた。
*
蠢き出す世界会場を、摩天楼は波打つように揺れていた。
この声は紛れもない。どう聞いたって、聞き飽きた自分の声だ。
エネはそう思って、走る。はしる。ハシル。
声は歌うように言葉を紡ぐ。
「あの丘を超えたら20秒でその意味を嫌でも知ることになるよ」
あの丘、とは通称『世界の涯』と呼ばれたあの場所か。エネは無意識に頷いていた。
そして、声は強めに語気を高めて、言った。
「疑わないで。耳を澄ませたら20秒先に」
彼女はまた、頷いてその声の言うとおりにした。
彼女は緊張というものはなかった。
あるものは今まで行くことが出来なかった場所へといける優越感のみだった。
カゲロウプロジェクト 18話【二次創作】
「目を疑う話」二話目。まだ続きます。
―この小説について―
この小説は以下の曲を原作としています。
カゲロウプロジェクト……http://www.nicovideo.jp/mylist/30497131
原作:じん(自然の敵P)様
『人造エネミー』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm13628080
『メカクシコード』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm14595248
『カゲロウデイズ』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm15751190
『ヘッドフォンアクター』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm16429826
『想像フォレスト』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm16846374
『コノハの世界事情』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm17397763
『エネの電脳紀行』
『透明アンサー』
『如月アテンション』http://www.nicovideo.jp/watch/sm17930619
ほか
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