「…っあ…。」
また、音を外した。また同じ場所で。何度確認しても調節しても直らない。
「悪亜…?」
「すいません、マスター。」
歌えなきゃ、意味がない。歌うことが存在意義であるのに。
僕は、何がしたいの?
走り出した足は止まらなくて、それと一緒に"悔しい"という感情も溢れだした。
悔しい情けないどうしたらいいかわからないなんで僕は歌っているのどうしたら歌えるのねえねえねえ!!!!
「…誰か教えてよ。」
「何を?」
頭上から降ってきた声に驚き、顔をあげるとそこには斬が立っていた。
「公園しかもブランコで何やってんの?」
ギイと隣のブランコが軋む音と優しい声。
口が滑った。
「音が…っ、出なくて…。」
「…は?」
「何回調節しても、歌っても歌えなくて…!」
悔しくて悲しくて自分が情けなく思えてきて…。
心のもやもやを全部吐き出すように斬にぶつけた。
ギイとブランコの軋む音、ぽたぽたと僕の目から落ちる涙。
「なんか、悪亜がそう言うの珍しいけど…。それってつまりは、スランプでしょ?」
スランプ?何ソレ…。
「好きなんだけど、一時的に出来なくなっちゃうこと、だったと思う。マスターがスランプはいつか溶けて消えて無くなるもの、捉えようによっては休憩時間って言ってた。」
ぽん、と頭に置かれた手。
目の前の斬の顔。
「だから、悪亜に少しのんびり気楽にしろってカミサマがスランプ与えたんだよ!」
「休憩…?」
そうそうと笑って頭を撫でて、斬は帰ってしまった。
休憩?いつか、溶けて消えて無くなるもの。
口ずさむメロディー
「…っ!マスターっ!!!」
僕はまた一つ学んだ。
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