雨が降り続く中、雨空を見上げてみたら
雨粒が目に入って、痛かった。
それでも、涙を隠すのには充分でした。
充分すぎる、雨でした。
雨粒が、私の頬を伝う。
それは私の涙か否かなんて、もはやわかりはしない。
雨垂れが、音を立てて弾け飛んだ。
そんな気がした。
雨脚が強くなって、私を叩きつける。
私は、ただ体を雨曝しにした。
それでも、心を隠すのには充分でした。
雨空が、私を見下ろしている。
それは私を叱るためか否か、もはやわかりはしない。
雨水が、じわりと地面に消えた。
そんな気がした。
サツキアメ
五月雨、私を隠す。
涙も、心も、君の、姿も、私の、全てを。
隠して欲しくないものすらも。
それでも、よかった。
サツキアメ
五月雨のある日、私は姿を消した。
五月雨―サツキアメ―
「全てを、忘れて消しかった。思い出にするのが、なってしまうのが嫌だった。
ただ、思い出になって掠れて欲しくなかった。
一緒に笑って、一緒に泣いて、一緒にあるって…
たくさんのときを一緒に過ごしたのに、簡単に掠れていくのが嫌だった。
思い出になって、掠れて、結局朧になるのが嫌だった。
だから、この鮮明な記憶ごと全て、なかったことにしたかった。
だけど、出来なくて、出来なくて、寧ろかすれていきそうで。
嫌になってしまった。全てが、自分の全てが。
だから、五月雨に紛れて、自分ごと消えようと思った。
そしたら、鮮明なまま記憶ごと、消えてくれるから。」
机の上の一枚の紙に書かれた、神隠しにあったと思われてた少女の手紙
涙のあとがみてとれる、手紙だった。
ところどころ、滲んだ字はきっと、涙のせいだろう。
彼女が行方不明となったのは、彼女の大切な人が死んでしまった二週間後。
ずっと、二週間ずっと考え込んでたのだろう。
彼女の行方を知るものは、誰もいない。
五月雨の降り続くある日、彼女は姿を消した。
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