『ぐりこ』 その1

投稿日:2011/02/13 21:48:56 | 文字数:2,139文字 | 閲覧数:83 | カテゴリ:小説

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私→ミク
センパイ→KAITO
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TEXT
 

『ぐりこ』 その1

作・四方山 噺(のんす)





「デ~~~トぉぉおぉぉぉ!? アンタが!?」


 発端はとても単純だった。誘われて、そして頷いた。ただそれだけ。でも、


「い~や、ありえないっしょ。っていうか相手誰よ? どこ中?」


始まりがいかに単純でも、それを受け止める私の内心は、全くもって平静でも平穏でもない。


 思うに、キャラメルみたいなものなのだ。砂糖と牛乳、突き詰めればそれだけで作られているくせに、甘かったり、苦かったり、硬かったり、柔らかかったり、


「…は? もっかい言ってみ?先輩? って、あの、去年の男バスキャプテンの? 今は西学通ってる?」


時に、胸を焼く狂おしいほどの風味に胃と肺がやられて、噎せるついでに、ついつい一緒に吐きだしてはならない思いを、


「いやいやいやいや、ありえないって! C組のナオが数学のサコティーと付き合ってるくらいありえない。 お受験控えてストレスフルだからって、そんな妄想はないわ~。 …ドン引き」


…思いを、よりにもよって、と頭につけて語らねばならない友人相手に吐露してしまう羽目に陥るのだ。


 単純だったはずのものを、浅はかな素人考えでかき乱している感も無きにしもあらず。






 私は、高校受験をあと半年ほどに控えた中学三年生で、性別はいちおう、オンナノコ…だったりするんだけど。


 もともと骨格がちょっと太めで、さらに女子バスケ部でレギュラーもやっていて筋肉質なせいか、人よりちょっと、ほんのちょっとだけ、性別の判断に時間がかかる…かも。小学校の頃なんかは外に出るたびに男の子に間違われていたし。


 そんな私でも、ほんの15かそこらのジョシチューガクセーであるわけだから、お年頃な悩みもそりゃあ両手の指の数くらいは持っているわけで。容姿とか成績とか嫌いな食べ物とかお父さんの体臭とかデリカシーのない友人各位とか…恋の悩み、とか。


 去年、私が二年生で、まだレギュラーになれずにいた時期のことだ。


 自分では、(部で一番ではないにせよ)熱心に練習しているつもりで、でも実力がつかなくて、一緒に入部した同級生たちにみるみる差をつけられて。
 それでもようやく大会に出させてもらえるかも、というくらいには上達したところに、練習中のケガ。右腕の骨折、全治3週間。


 その狙い澄ましたかのようなタイミングとか、出られなくなった大会とか、そもそも出られたかどうかわからないとか、一年後に迫った受験とか、お母さんのお説教とか、おにいちゃんが履き終えたパンツをためらいなく洗濯機に放り込むとか。あと先日、街角の占いでべちゃっと投げつけられた「大殺界」の三文字とか。


 そんなこんなが有機的に絡まって網をなして、ようするにヤケになって私は部を、趣味を…生き甲斐を、投げ出そうとした。たったひとつの。
そんな私を本気で叱ってくれて、励ましてくれたのが『センパイ』だった。


 お前バカだろ。逃げんなよ、これだからガキは。上達しないのは、お前が周りを見てないガキだからだ。やるべきことがわかってないからだ。

 そんで、そんな大事な時期にケガなんかすんのは、やっぱり周りが見えてないガキだからだ。アホガキだからだ。アっホっガっキ! だからだ。

 …ひとつしか違わない? ハッ!これだからゆとりのぬるま湯に浸かりきったガキは。その細けぇとこばっか目ぇいって、目の前にあるもっと大事なものから焦点ズラしてっとこがガキってんだよ。

 何だお前、酔っぱらってんのか? バスの座席せっかく窓際にしてもらったのに酔っちゃった~。遠くに目の焦点あてて車酔い覚まさなきゃ~民間療法ゴイスー☆
 …ってか? 酔ってない?そもそもそんなキャラじゃない?

 キャラうんぬんは置いとくにせよ、酔っぱらってるのは事実だろ。『カワイソウなジブン』に、酔ってんだろ。

 うまくならない、うまくいかない、そんな包帯でぐるぐる巻きにして、せめて暖を取ろうとしてる。

 違うか?違うなら言ってみせろよ。こんな口うるさいオレなんか、さっさとそのガッチガチのギプスでぶっとばせばいい。どうした、ほら、やれよ、根性みせろ!


 男子バスケ部のキャプテンで、みんなの憧れで、容姿や才能にだって恵まれていて、そんなひとに傷心を一層えぐられて、悔しかった。ほんとうに殴ってやりたかった。顔がパンパンになるまで殴り倒したかった。


 悔しくて悔しくて悔しくて、でも一番悔しかったのは、そんなときでも「ギプスなんかで殴ったらセンパイが痛いだろうから」なんて鉛色の善良を盾に、気持ちを、この胸に満ちた猛毒を吐きだせない情けない自分だった。


 センパイは自分が汚れるのも承知の上で、酔った私の口元にエチケット袋を差し出してくれたというのに。優しく背中をさすってくれていたというのに。


 まっすぐで、生まれ持った才能をさらに磨く努力家で、でもちょっと説教くさくて暑苦しくて、笑うと目が猫みたいな線になるセンパイに恋をしたのはつまるところ、当然の帰結だった。






>>>『ぐりこ』その2 へ続く

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