こんな雨の日は
外に出るのも億劫だ
そうだ 良かったら
僕の昔話を聞いてくれないか
蝉が鳴き始めた日差しの強い頃
僕が初めて人を殺したときの話を

その日はむしゃくしゃしていて
何もかもがうまくいかなくて
確かテストの点が悪かったとか
恋人と別れたとか
まあ別に理由なんてなんでもいいんだ
悪いことはいつも重なるもんだ

気分転換に歩いていた 学校の裏山で
輪っかになったロープを見つめてる
首吊り間近の学生がいた
止めるべきか無視するべきか
人間らしいのはどちらだったか
わからないまま僕がしたのは
迷うように佇む志願者の
踏台を蹴り飛ばすことだった

別にこれは懺悔ではない
ぶら下がる体が振り子時計のようで
見上げた顔は僕には笑顔に見えた
喜んでくれて本当に嬉しかった
僕は善い人間だ 君もそう思うだろ
一人の心を救えたんだ


思い返してみたら
僕は昔から冷たい人だねと
言われ続けて
本当に自分がそうであるように思えて
ありがとうと言われたかった
感謝されてみたかった

背中を押してあげたとき
彼女はありがとうと落ちていった
刃物を引いてあげたとき
彼は安らかな眠りについた
ああ僕の罪はどうでもいいんだ
喜んでくれればそれでいいんだ

最後の最期に頼ってくれるのが僕なら
なんでもするさ 蝉の鳴き声を思い出す
裏山に埋めた彼女のおかげで
今年もカエデが色づいた
一際紅く色づいた
善いことをしたと心があたたまる
僕は冷たい人じゃなかった
優しい人になれたんだ

別にこれは懺悔ではない
疲れきった人を助けただけで
いつも彼らの顔には笑顔が浮かんでいた
喜んでくれて本当に嬉しかった
僕は善い人間だ 君もそう思うだろ
なんでそんな顔で僕を見るの


こんな雨の日は
外に出るのも億劫だ
そうだ 良かったら
僕の昔話を聞いてくれないか
こんな雨の日に死んだ
僕の友だちだったあの子の話を

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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免罪符

とある偽善者の話。

最近色々と書き方を変えて試しています。
今回は物語のような詩を考えてみました。

閲覧数:125

投稿日:2018/11/20 17:08:39

文字数:800文字

カテゴリ:歌詞

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