流船が怒りながら店内に戻ったのを確認すると、幾徒は軽い溜息を吐いた。
「…笑えていましたか?」
「ああ、ばっちりな。」
「…そうですか…。」
休んでいないのか少し顔色が悪かった。溜息を何度も吐いてはふら付く足取りで車へ戻ろうとしていたが、流石に限界だったんだろう。幾徒はよろめくと壁にぶつかる様にもたれかかった。
「おい、少し休め。無茶し過ぎだ。」
「どうして休めるんです?言魂も、銃も、幎も、俺が作った…俺のせいでこんな…。」
「お前のせいじゃないだろう?充分頑張ってるじゃないか。」
「…何処が…頑張って…なん…か…。」
「幾徒?!」
崩れる様に幾徒が倒れ込んだ。少し荒い呼吸に手を額に当ててみる。少し汗ばんだ額は明らかに熱かった。
「お前…何だよ!この熱!ちょっと待ってろ!」
「止め…!大丈夫だから!」
「幾徒!」
「…判った…。」
もう一度流船を呼び出して事情を話した。最初は怒っていたが事情を知るや否や、テキパキと対応し、幾徒の側を離れようとしなかった。
「仕事は?」
「休憩取りました。」
「随分幾徒に甘いんだな。甲斐甲斐しいと言うか何と言うか。」
「…幾徒は頼流を守ってくれました。俺だけじゃなくて、俺の唯一の家族も守って
くれると言ってくれました。それに報いる為にも、こんな時位俺が幾徒を助けます。」
「…良い事言ってるんだけどその姿で『俺』って言うの止めない?月乃ちゃん。」
「貴方に真面目に話を振った俺が馬鹿でした。」
ソファに横たわる幾徒を心配そうに見守る姿を見て、不意に頼流が事故に遭った時の事を思い出した。バイク同士の軽い接触事故で、双方の怪我も打ち身と捻挫程度の物だった。だけど連絡を受けて駆け付けた流船は真っ青になってガクガクと震えていた。処置を終えた頼流を見付けると、まるで戦地から戻った様にホッとしていた。
「可愛いねぇ…よーし、おにーさんが抱っこしてやろう。」
「わっ?!ちょ…ふざけないで下さい!」
「幾徒は大丈夫だ。そんなこの世の終わりみたいな顔するな。」
「そんな顔…。」
「してるよ。」
「…本当に大丈夫ですか…?」
「平気、只の過労。迎えも呼んだし、休めば直ぐ元気になる。」
「…なら、良かったです。」
「チューしても良い?月乃ちゃん。」
「血迷うのも程々に。」
実はその姿だと男に見れなくて困ってます。とは言うまい…うん。
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