世界中の音が消えてる…自分の声すら凄く遠くから響いてる…私は歌ってるの?それとも…もう声は擦れて聴こえないの?喉が焼ける様に痛い…口の中に何度も鉄の味が満ちては吐き出して、だけどまだ歌える…。
「…早く!こっちです!」
「彼女の歌で皆正気に戻ったんです、だけど歌がまだ…!」
「もう6時間以上ずっと…!」
「スズミさん?!スズミさん!!」
誰…?誰か…呼んでる…?
「げほっ…!うっ…!ごほっ…!」
「スズミさん!もう止めて下さい!!もう歌わないで!!」
止める…?ダメだよ…騎士を守らなきゃ…。
「抑制剤を!このままじゃ彼女が保たない!」
「スズミさん!しっかりして下さい!」
「律…スズミ…?!」
「羽鉦さん…!スズミさんが!」
「スズミ?!おい!!しっかりしろ!!スズミ!!」
「彼女…もう意識が…。」
「抑制剤は!?急げ!!」
ごめんね…騎士…私ずっとずっとただ貴方を苦しめて来た…。何も出来なくて、悲しんでるのに判ってあげられなくて…私役立たずだったね…。だけど…貴方は私を見捨てなかった…。忘れられるのを知っても愛してくれた、愛されてくれた。私、凄く、凄く嬉しかったよ…。
「駄目です…抑制剤が…。」
「何で…何で効かないんだ?!」
「もう…もう止めてくれ…!スズミ!もう良い!もう良いんだよ!お前の歌で
皆助かったんだ!もう歌わなくて良いんだよ!」
私はカナリアだから…。忘れても忘れても…同じ相手を見付けて…そして歌うの…愛の歌…。
「誰か…誰か止めて…誰か…!!」
「スズミ!!」
「啓輔!!…お前どうして…!」
「……スズミ……!」
「騎士様…!」
「騎士…。」
優しい腕がゆっくりと私を抱き締めた。重なった唇から、熱い血が零れて、私はそれを飲み込んだ。
「騎士…?」
「…ありがとう…スズミ…。」
薄れる景色の中で愛しい声が聞こえた気がした。
BeastSyndrome -108.愛しい声-
ごめんなさいとありがとう
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