それはとある夏のことだった。
「神威、暑い。あつすぎるわよ」
「知らんよ。というかどうしてお前はこの暑い中何も対策をしていないんだ。ぼくなんてちゃんと対策しているぜ?」
「ふーん、例えば?」
「例えば……アイス!」
初音には絶対に出来ない、研究室を借りている僕だから(?)出来ることだ! 冷蔵庫の扉を開けて、大量の棒アイスを初音に見せつけると、初音は目を細めて言った。
「それ一本ちょうだいよ」
「……しょうがないなー、勝手に食べちゃダメだからね?」
まあ、鍵があるから大丈夫だろうけれどね――そう言って僕は二本アイスを取り出す。
「ソーダとバニラがあるけれど?」
「ソーダがいいわね」
「そうかい」
というわけで初音の意向を聞いて、バニラを戻してソーダに代える。僕も今日はバニラではなくソーダの気分だ。
アイスを手渡すと、包装を外しすぐにほおばった。そんなことしてもアイスは逃げていかないし、頭が痛くなる――
「くぁーっ。いったーい!」
予想通りだった。そんなことを考える前に初音は頭を抑えていた。
「アイスを一気に食べるから……」
そんなことを思いながら、僕もアイスを頬張った。
*
そして、また暑い夏の日のこと。
ラジオでは真夏日連続記録更新とかどうでもいいことを言っていたので、ラジオを切った。こんな茹だるような暑さでそんな言葉を聞いてもさらに暑くなるだけだ、と思ったからだ。
今僕は廊下を歩いている。実験の資材を運んでいるためだ。今はまだ授業中なので、急いで帰っている、というわけだ。
研究室に戻って、資材を適当な場所に置いて、冷蔵庫の扉を開ける。確かまだ二本くらい残っていたはずだった。そろそろ買い貯めしておかなくちゃなあ。
――と意気揚々と扉を開けたのだけれど。
「……あれ?」
アイスが、なかった。
「あー、やっぱり夏はアイスが一番ねー」
気付けば、研究室の椅子に初音が座っていた。どうやらアイスをほおばっているようだった。……はて、机の上にある包装は『二つ』あるように見える。
「ねえ、初音?」
音も立てずに初音の後ろにたって、肩を叩く。
初音はどうやら罪の意識くらいはあったようで、ゆっくりと振り返った。
――その後、僕によるお説教が一時間と、初音にアイスを買いに行かせたのは別の話。
おわり。
僕と彼女の不思議な日常 Another03
漫画版二話おまけ小説。
そろそろまとまってきたのでSSをpixivに投稿したい。
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