こんにちは!中上慶之輔です。
見上げるとそこに広がっているのは巨大な生き物の内側でした。静けさに包まれた深海よりもまだ深い場所で、青い皮膚がかすかに脈動しています。私たちはその巨大な肉体のひだに身を寄せながら、息をひそめて生きているのかもしれません。
遠くから届く規則的な振動は、心臓が刻む鼓動なのか、それとも誰かが遠い過去に残した歌声の残響なのか判別がつきません。手伸ばすと、冷たい空気が指の隙間をすり抜けていきます。そこには目に見えない糸が幾重にも張り巡らされており、誰かが一筋の糸を弾くたびに、空間全体が小さな音を立てて震えます。
私たちが言葉と呼んでいるものは、その糸を渡る小さな振動に過ぎません。口から放たれた瞬間に光の粒となって飛び散り、広大な空間を漂いながら、誰かの寂しい肩の上にそっと舞い降ります。誰にも届かなかった言葉たちは、消化されることなく透明な結晶となって足元に積み重なっていきます。その結晶を踏みしめるたび、かすかな悲鳴のような澄んだ音が響き渡ります。
この巨大な生き物の体内では、時間も歪んで流れています。昨日流した涙が、明日の朝に降り注ぐ冷たい雨に変わることもあります。過去と未来が区別なく混ざり合い、すべてが同じスープの中で静かに揺れているのです。私たちが覚えている懐かしい記憶も、誰かが明日見るはずの夢の破片かもしれません。
私はここで、途切れそうな糸を結び直し、崩れ落ちそうな光の結晶をすくい上げる作業を続けています。誰にも気づかれない小さな修復を重ねることで、この巨大な生き物は今日もしずかに息を吐き出し、私たちは安全な夢を見ることができます。
果てしない闇の向こう側で、新しい光の粒が生まれようとしています。それは誰も聴いたことのない曲の最初の音符であり、世界が新しく生まれ変わる瞬間の合図でもあります。あなたが次に吐き出す溜め息も、誰かの世界を美しく彩る新しい振動になるのです。
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