話していても埒が明かないと言う事で本当に俺達はアミダをする事になった。当たり、いや、外れを引いたのは俺と『お姫様』の聖螺だった。

「聖螺、本当に大丈夫か?他ばかりじゃなくて自分も防御するんだぞ?
 あぁ、それから…。」
「大丈夫です。私ちゃんと使いこなせる様に特訓しましたから。」
「そんなに心配なら交代しようか?王子様。」
「別にそう言う訳じゃ…!」
「座標割り出し完了したけど…ちょっと気になる点が一つ。」
「今度は何だよ?」

うんざり気味なゼロの声に少しムッとした幾徒は俺と聖螺に数枚の紙を見せた。『曖兎音イコ』と書かれたラインに引っ掛かるみたいにもう一本のラインがあった。

「何ですか?このライン…えっと…拓音…ヤクル?」
「Sagittariusの適合者、拓音ヤクルだ。イコの時間軸上に交差点がある…つまり、
 ヤクルも同じ場所で接触出来るかも知れないって事だ。」
「ヤクル君って、あのちっちゃい男の子でしょ?大丈夫なの?あんまり強いって印象無いんだけど。」
「Sagittariusは防御と補助に特化した武器だ。ヤクルが戻れば特性上鬱音コアを解放出来る。」
「コアが?!おい、本当か?!」

ずっと隅で傍観していた黒い男、純が急に話に割り込んで来た。確かコイツの身代わりになったって言う適合者だったっけ?今こそ普通にしてるけど、聖螺を殴り付けてる姿がまだ脳裏に焼き付いて気持ちが悪い。いきなり暴れ出したりしないんだろうか?皆よく平気だな、鎖で繋いどけば良いのに。

「…から出来れば…おい、クロア?聞いてるか?」
「へっ?あ、ごめん、全く聞いてなかった。」
「…ヤクルに接触したら武器を渡せと言ったんだ。トリガーを掛けてあるから触れるだけで
 『脚本』が解ける筈だ。」
「ふーん…。」

周りが忙しなく準備する中、いまいち皆の団結に違和感を覚えていた。流船の事や脚本の事は判ったし酷い話だとも思う。だけど心のどっかで凄く冷めてる俺も居た。戦争だろうがタイムスリップだろうが好きにすれば良い、知らなければ適当に暮らして行けるだろうにって、無関心な俺が居た。

「準備完了、装填始め。」
「………………。」
「クロアさん?」
「嘘でも良かったのに。」
「え…?」

ぽつりと口から零れた言葉が自分の耳に届くと同時に、真っ白な光が見えて体が宙に放り出される様な感覚を覚えた。と、直ぐに足元に地面の感触がドンと訪れた。

「…此処は…何だ?学校?」
「西の台高校みたいですね、校舎見覚えがありますし。でも何処に行けば…。」
「なぁ、ちょっと聞いて良い?」
「はい?」
「お前『王子様』の事本当に好きなの?」
「へっ?!あ…えっ…あの…その…!」
「こう言っちゃなんだけどさ…『脚本』で好きだって思い込まされてただけとか、誰かに仕向けられた
 とか思わないの?そう言うのすっごい嫌いなんだけど。」

言葉を詰まらせた聖螺は少し視線を泳がせた後、視線を戻した。

「私は…。」
「キャァァアア――――ッ!!」
「――っ!」

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コトダマシ-74.仕向けられた-

偶然と必然は背中合わせらしいぞ

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投稿日:2010/12/25 12:18:32

文字数:1,264文字

カテゴリ:小説

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