「お初にお目にかかります、女王様」
「・・・」
「今日より、お傍で仕えさせていただきます、レンと申します」
「・・・」
「あの、女王様?」
「・・・」
返事をしない女王様。
薄いカーテンの向こう側にいるために、顔の見えない女王様。
それでも知っている。女王様の顔。
小さい頃に覚えている、僕の妹リン。
優しく微笑み、僕を呼ぶ声。今にも聞こえてきそうな思い出の中、その場を静かに去った。ずっと待っていても良かったけれど、近くで見ていた大臣から「いつまでそうしているつもりだ」と言いたげな痛い視線から逃げてしまった。仕方ない。今ここで大臣の機嫌を損ねれば、リンの傍に居るチャンスが遠ざかってしまうから。
「やあ、レン」
「あ、メイト!」
赤髪の騎士メイト・・・彼は、僕の親友だ。
城下町に歳の近い妹を置いて城を守っている。
会いたくならないのかって聞いた事がある。彼は小さな溜め息を吐いてこう呟いた。「毎日会ってるさ」って。まあ、後から聞こえてきた「夢の中で」って言葉は流したけれどね。
「仕事はもういいの?」
「ああ、部下に任せてきたからな。挨拶は終わったのか?」
「うん、まあ・・・」
「なんか元気ないな。どうした?」
「声、聞けなかった」
「・・・そうか・・・」
メイトは慰めるようにして、僕の頭を軽く叩く。
慰めてくれるのは嬉しいけど、こんな事ぐらいでヘコむような性格してないんだ。一応、側仕え使用人にまで昇格できた。チャンスはいくらでもある。それを逃さなければいい話だ。
「騎士団長メイト殿」
「いっけね!用事思い出した!」
「その用事の前に、お話があるのですが?」
心地良い低音の声で呼ばれたメイトは、まるで聞こえていないかのような素振りを見せたが、振り向いた先にいる声の主に小さな舌打ちをする。
「・・・話、か・・・手短にしろよ・・・」
「ここでは少し」
チラリと僕を見る大臣に、空気を読む。
「メイト、またね!」
「・・・悪いな・・・」
大臣を睨み上げて不機嫌そうな表情とは逆に、僕に謝るメイトの声は心の底から申し訳なさそうだった。
騎士団長と大臣が仲が悪い事は、城下町や国外でも有名な噂になっている。真実かどうかはどうでもいい。ただ噂の種は振りまかれるのが楽しいだけなのが、国民だ。でも、まさか本当だったんだなぁ、なんて考えながら苦笑いを浮かべる。
「さて、どこ行こうかな」
呟きながら、僕は中庭へと向かった。
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