信号が青く染まり 人の波が押し寄せる
スクランブル交差点 真昼の喧噪
数え切れない他人の意識に 押し込められた一人の男は
誰にも気付かれる事無く やがてそこから姿を消す
視界が移り変わり 目前に広がる黒い壁
重くきしむ轟音 扉が開く
入ればきっと戻れない そう思っているはずなのに
自分の心を置き去りに その身は扉の向こう側へ
「入ってきたよ、馬鹿な奴だ」
遠く遠い彼方から声がする
人が群れる都会の真ん中で彼は
出口の無い巨大な迷路に迷い込んだ
真っ白い小部屋 その先には
果てしなく続く 薄闇の回廊
見下した笑い声 聞き流しながら
ただふらりふらりと 歩き続ける
振り向きもしないで
白く濁った意識 空回りを繰り返す
一人ぼっちで歩く 夢の散歩道
無限の螺旋階段 笑い続ける傍観者
歩きながら男は呟く 「出口は一体どこだろう」
ゴウゴウと唸る記憶の大渦
暗く粗い画像のサブリミナル
来てはならない所へ来た彼は
ただ一人迷路の中で彷徨い続ける
鈍り始める意志 心も塞いで
ただ出口を求める そんな最中に
目に留まったのは 小さな扉
笑みをこぼしながら 迷いもせずに
扉に手を掛ける
信号が赤く染まり 人の波は静まりかえる
スクランブル交差点 その真ん中に
取り残されていたのは 仰向けに倒れた一人の男と
目も眩むような 真っ白い真昼の陽光
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