出来るのならずっと、君の為の優しい音楽を歌っていたかった。
おそらのいろね。
あおいかみに、あおいひとみ。
カイトはおそらのいろなのね。
「バカイトォッッッ!」
ふ、と再生された優しい声に一瞬気を逸らした俺の耳に、厳しい怒号が降り注ぐ。
ぱちりとひとつ瞬きをして前を見れば、緑の髪をなびかせた少女が一人。
赤い空を背負って、炎を写す大きな緑の瞳が俺を睨み付ける。
「バカイトって・・・。ひどくないかなあ?」
先ほどの言葉に小さく反論すれば、途端にその整った眉がきりりと釣り上がり、途端に集音機能にキン、と不快な音が走る。
「あんまりのんびりしてると、そのいらない耳壊すわよ」
威嚇されたのだと眉を顰めるも、一瞬。
本当に、どうでも良くて、下らない。
壊れたら直せばいいだけの自分たちにとって、では「壊れる」とはどれだけの意味があるものなのか。
自らを嘲笑するように器用に口元を歪めて、そして俺は炎の先を見る。
突撃支援射撃の後、それでも迫りくる人、物、凶器。
その最前に立ち、真っ直ぐにこちらを射抜く瞳を持つ少女に。
「わかってるよ、ミク。・・・始めよう」
熱風に煽られるように、突撃仕様に換装された青緑色の少女は戦場を向く。
左手に、拡声器。
人のように煮えたぎる炎に焼かれることなどあり得ない、鋼鉄の喉で。
歌う。
少女の高く硬質で無機質な歌は濁った空気を切り裂くように、前へ、前へと飛び出してゆく。
重ねるように俺は、出来るだけ広く広く、遠くに飛ばすことを意識する。
少女の目の前では機械が壊れ、人が壊れ、大地は裂けて、大気は鳴動して。
それはひどく純粋な凶器であると。
歌声は清らかで、乗せる言葉は切ないくらいにその心を歌うのに、けれども確実に死を量産する為の武器。
人の脳髄を揺らす、VOCALOIDと呼ばれる人工物の凶器の調べ。
殺傷力にのみ特化した少女の形をした歌う兵器は、その曇りのない瞳を一度たりとて揺らすこともなく、迫りくる兵士の口、耳、鼻から地を溢れ出させる。
うっすらとした笑みさえ浮かべて。
ワタシヲミテ、と叫びながら。
それ調べに乗せて、俺は歌う。
望んだ願いでなくとも、歌う人形は「歌う」からこそ、ここに「在る」のだから。
一点照射の歌声の代わりに、周囲の大気を微妙に操り、決してこちらに敵兵器の手が届かぬように、震わす。
発されたミサイルは照準を失い右左に逸れ、遠くまで響く俺の歌声は足を、腰を、戦意を挫かせる。
人が死ぬ時に鳴る、音。
いつでも軽やかに響かせて、少女は進む。
この公国の、唯一にして最強を誇る兵器、初音ミク。
歌い終わる頃には、名もない敵兵の屍を幾つ越えて何処へ辿り着くというのだろうか。
おそらのいろね。
あおいかみに、あおいひとみ。
カイトはおそらのいろなのね。
喉を震わせ、俺は視覚野を、切る。
ロワンタンスカイ
歌声を兵器として利用されるVOCALOID達。
ひとりの少女の為に優しい歌だけを紡いでいた始発機KAITOが、再びその目を開けた時、目の前の緑の少女はひたすら人を屠る為に声を震わす。
空は遠くなったのか、遠いのが空なのか。
赤い空の下、百年の時を超えて、VOCALOIDは歌い始める。
ボカロを歌う戦闘用アンドロイド設定にしてみました。
めーちゃんとリン・レンもこれから出していきたいな~と思ってます!
よろしければ一緒に何か作ることが出来たら嬉しいです。
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