語り部の紙飛行機
ようこそいらっしゃいました。このたびお聞かせするのは囚人に恋をした少女のお話です。
その少女はいつも、病院を抜け出しては父親の仕事場で一人の囚人と会うことがただ1つの楽しみだったそうです。2人はいつしか手紙を書いて紙飛行機を折り、お互いの元へと飛ばして、文通をしていたそうです。
囚人からの手紙は少女にとって何よりも大切なものでしたが、
少女の父親がそれを快く思わず、ある時手紙を取り上げてしまったそうです。しかし、少女は物事をあまり知らず、父親の思いを理解できなかったそうです。
想いを理解できなくとも、少女は父親に従うべきだということだけは分かっていたそうです。
しかし、毎日様子を見に来ては同じ言葉を告げて去ってゆく父親の嘘よりも、手紙で伝えられる囚人の思いこそが、光の指さない部屋で過ごす少女にとっての生きる意味を、未来の光を与えていたそうです。
しかし、幸せな日々を過ごす中で少女の病状は日に日に悪化して行き、
病室にいる少女に繋がれた管は増えて行き、耳は少しずつ
聞こえなくなっていったそうです。
歩くことすらも辛くなり、少女の心には「もうここから生きて出られない」
という確信がいつしか芽生えていたそうです。それならば、
心配だけは掛けなくて済むようにと思った少女は囚人の元へと走ったそうです。
「遠くに行くのよ。だから、バイバイ。」
たったそれだけの言葉を乗せて、囚人の元へと壁を越えて行く
紙飛行機を見ながら少女は、涙はもう見せられない。
そう思い作り笑いをしたそうです。
そんな少女に囚人は
「待つよ、いつまでも待ってるよ。君が来るその日まで。手紙を大事になくさずにいたら、また逢えますよね…」
涙を流しそう話しかけたのですが、少女は何も答えずに、そのまま囚人の元を去ったそうです。
そして、少女の病状はその日を境によけいに悪化し、その原因が囚人にあると考えた父親は、囚人を処刑してしまったそうです。
少女は囚人に別れを告げて以来、一度も病院から出ることは無く、囚人の哀れな最後を知ることも無く、体の端から消えていくかのように感覚を失って、動かなくなってしまったそうです。
延命装置に繋がれた少女は、次第に霞んでゆく意識の中で、お迎えがもうすぐ来るのだと感じ、囚人との別れ際、強がらずに全てを話せばよかった。
けれどそれに気づくにはあまりに遅すぎたことに気付き、最後に、囚人に逢いたいと強く願ったそうです。
光の当たらない花はただ、枯れてゆくのを待つだけの運命。しかし、その華が枯れないように、少女に光を与えていたのは囚人からの手紙だったそうです。
しかし、その手紙も、もう霞んで読めなくなり、部屋に無機質な音が響く中で少女は亡くなったそうです。
それと同時に、少女の手から握られていた紙飛行機が滑り落ち、
それに気付いた父親が拾い上げたそうです。その手紙に綴られていたのは、
幼い頃から病院で過ごし、一人の友人も居なかった少女と、
迫害を受けていたために友人などできるはずも無かった囚人がお互いにとって初めての友人であり、何よりも大切だということだったそうです。
そして、娘を守ろうとしていた自分の思いこそが、少女を傷つけていたことを悔やんだ父親は、囚人の墓の隣に少女の亡骸を葬ったそうです。
いかがでしたか?私のお聞かせした物語は。さて、次に来られたときは何の物語をお聞かせしましょうか。今日のところはここでお開きにしましょう。帰り道にはどうぞお気をつけて。よければまた、私の物語を聞きにいらして下さい。それではさようなら。
コメント2
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ご意見・ご感想
文鳥
ご意見・ご感想
誤字指摘感謝です!
いえいえ、すっぱり言ってもらったほうが、
すぐに修正できるので歓迎です。気を使ってもらう必要ありませんよー。
2009/11/07 18:54:55
ayuu
ご意見・ご感想
こんばんは、ayuuです。
『囚人』読ませていただきました!!
眼から鳥肌(?)です・・・・!!!!
ブクマさせていただきます
あの・・・ものすごく言いにくいのですが、一つだけ『囚人』が『主人』になってました・・・。
2009/11/07 17:25:42