緑の草原を叩き割るように
鉄条網の柵は続いている
飛び越えさえすれば簡単に 向こうの土地へ入れるよ
撃ち殺されるのが怖くなければ


草原の果てに見える街は
幼なじみのあいつが住んでいる街さ
走っていけばそんなに長くかからずにたどり着けるだろう
だけど あまりに遠すぎる街だ


鉄条網が今より錆びついて破れていたころ
俺とあいつは互いに穴をくぐって遊びに行った
すると大人たちが ある日 柵を全部取りはらってくれた
新しい鉄条網をつけるためにね


鉄条網の向こうとこちらで 今日も銃声は鳴り響いている
見た目が少し違うってだけで 無駄な血をお互い流しあっている
豊かな恵みの大地に 突き刺さった不格好な棘だらけの背ビレ
友よ 今夜もう一度あの柵を抜き倒しにいかないか


ここからこちらは俺の国
ここから向こうはあいつの国
誰が引いたかも忘れたのに みんなみんな鉄条網をはさんで
争うことが義務だと思い込んでいる


俺とあいつは口もきけなくなった
たとえ会うことがあっても挨拶すら交わすなと
お互いを理解しようと 秘密の合図まで作ったっけね
言葉が通じなくても分かりあえたのに


国のために戦えと父は言う
お前の血を誇れと母は言う
だけど俺はこの国もこの血も誇れない
嘘と憎しみを重ねた血なんて


「この世の人はみな 同じものから出発した兄弟だ」
などと言いながら大人たちは 自分と違う人々と争いあう
きれいごとと本音に支えられ 鉄条網は新しく 長くなっていく
俺たちも同じことを続けるべきだろうか?


鉄条網の向こうとこちらで 今日もいがみ合いは続けられている
好みが少し違うってだけで また憎しみと涙を増やす
口では平和を願いながら いつ果てるとも知れない愚かな戦乱
友よ 合図を覚えているか 今夜あの鉄線をぶった斬りに行こう


お前の国を誇れと父は言う
お前の血を誇れと母は言う
俺は この国を この体に流れる赤い民族の血を誇る
でもそれは誰より優れてると思うことじゃない


鉄条網の向こうとこちらで 今日も争いは繰り返される
違いを認めぬ高慢なエゴと 過ちを顧みない愚鈍がぶつかる
誰にでも等しく愛を注ぐ 緑の大地に残る黒い刀傷
母なる惑星が線引きをするはずないさ、壁を作ったのは人間の心だ


鉄条網の向こうとこちらで 未来へと憎しみが受け継がれていく
見えるはずのないものに欲をむき出して 今日もまた悲しみと死の山を築く
俺はもう一抜けるよ 殺し合いごっこにはもう飽きたんだ
友よお前も一緒に来ないか 二人であの醜い境界をぶち破ってやろう


俺たちの子孫のため いつか来るその日のため この惑星の未来のために・・・

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

連作「戦争」1 「鉄条網の野原で ~Brake The Wall~」

戦争をテーマにした連作のうちの一つです。

みんな平等だ平和が大事だと叫びながら、争いを繰り返す大人たちの嘘や古い固定観念に挑む少年の詩。彼は世界を変えることができるのか。

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投稿日:2013/04/02 22:14:20

文字数:1,122文字

カテゴリ:歌詞

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