満ちた月が、黒い雲に閉ざされる。
震えた唇。直に闇の息吹を吹き込んだ。
病んでいようと、腐敗しきっていようと。
総ては愛するが故、例え愛されていなくても。
鳥籠に押し込めて、枷と鎖で繋ぎ止めて。
ずっとずっと、こうやって君を僕だけのお人形にしたかったんだ―――
背徳の夜空に星屑は堕ちて消える。
隔絶された時間の中で、僕らは二人きり。
可愛く美しい、僕だけのお人形。
特注の深紅のドレスを着せて、長い髪を綺麗に整えて、
そして、僕からの“愛”という、何よりも美しいプレゼントで飾るんだ。
素直で賢い、僕だけの下僕。
ある日、君は微塵も動かなくなってしまった。
カラクリ仕掛けのゼンマイを何度巻いても、
君は目を見開いたまま。息を止めたまま。
白い首が、薔薇の花弁に埋もれるように真っ赤になって。
指輪を填めた左手の薬指さえ、氷みたいに冷たいよ。
恋しい愛しい、僕だけのお人形。
動かない君を抱き寄せ眠って、僕は夢を視たんだ。
「『不良品』はイラナイ。『優良品』だけがほしい」
そんなことを冷酷に告げて、君の喉元に刃を突き立てる夢を。
くだらな過ぎて笑声さえ乾く。
何よりも君を愛している僕が、君をそんな目に遭わせたりするわけが無いのに。
ヘンな夢だね。大丈夫、所詮夢だから。
現実になんて、成るわけがないんだよ―――
「愛してるよ。可愛い可愛い、僕だけのお人形………」
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