「・・・それで、名前は?」
珍しくレトが二人の新参者に訊ねる。
「あっ、私ですか?私は、遊音リアです。遊音は、あそびねと読みます。それで、リアはリアルのリアです。よろしくお願いしますねー」
全体的におしとやかな雰囲気で、にっこりと笑うリアという女の子。
「俺は、遊音ラク。遊音は姉と一緒で、あそびねと読みます。ラクとでも呼んで下さい」
「ラクトアイス・・・」
ラクという男の子の言葉を聞いて、レトが思わず呟く。
「・・・だめでしょう?レトくん?」
またまた珍しく、マニがレトをたしなめる。
「・・・・だって」
「いいよ、別に。ラクトアイスって意外とおいしいよな」
ラクはレトの言葉を別段気にしてはなく、レトとマニの正面に屈んでにっこりと笑った。
「うん♪」
「・・・ぇ、ぁ」
ラクの言葉に、レトは嬉しそうに頷き、マニは顔を赤くして口ごもる。
「・・・・これって、恋よね!」
今まで見守っていたナエルがすかさず言う。・・・主に、マニに向けて。
「なんか、すっかり春ですよね」
「そーだな」
傍観組のシキとグルトは、すっかり傍観者となって会話する。
「・・・・・あら?」
リアがムウを見て、首を傾げる。
「ひょっとして・・・牛音ムウさん?」
「なぜ私の名前を・・・」
のんびりだったムウの声が芝居がかったように変わる。
「いえ、以前どこかでバイトしてたような気が・・・」
「あ、もしかしてさ、あの通りじゃないかな?あの0番通りにいた人だよ」
「ん・・・?もしかして、俺に話かけてきた時にも、ティッシュ1つくれたよな」
アカイトは少し前のことを思い出す。
あの時は携帯のことに気を取られていたが、そういえばもらったような気がする。・・・ちゃんとポケットにもティッシュがちょこんと入ってるし。
「あ~、とすると・・・昨日ティッシュあげた人たちですね~!」
訳が分からずきょとんとしていた顔が、だんだんと溶けて再びとろけそうなのんびり口調に戻るムウ。
「私もナエルも、もらったわん!ほら」
そう言って、俺が持ってるのと同じものをポケットから取り出すワンとナエル。
「えーと、私たちは一昨日もらったんだよね!」
「そうだわん!」
ナエルの言葉に、うんうんと頷くワン。
「となると、君は0番通りでティッシュ配りをしているのか」
バンが聞く。
「はい~、そうですよ~♪他にもカフェ・カフェという喫茶店でもバイトさせてもらってます~」
にっこりと笑って言うムウ。
「へー、カフェ・カフェか・・・懐かしいな」
「アカイトにゃん行ったことあるにゃおん?」
アカイトの言葉に、ミンが聞く。
「もう前の話でな・・・今でもルカは働いているのかな」
「えっ、あのルカお姉さんがですか!?」
モコがびっくりしたように呟く。
「そうだぜ、そこの制服着て・・・なかなか似合ってたぜ」
「へぇ・・・。今度、行ってみたいですね」
「モコちゃんに同感です」
モコの言葉に頷くジミ。
「あ、ちなみにな・・・ムウ、こんな伝説知ってるか?」
「何でしょう~?」
アカイトはかつての想い人を思い浮かべながら言った。
「・・・カフェ・カフェで、プロポーズされるとずっとずっと一緒にいれるっていう伝説めいたこと・・・」
「・・・・・ああ、それは聞いたことありますけど~、」
ムウは少し言葉をまとめるかのように黙った後、しばらくして口を開いた。
「その裏伝説には、プロポーズされると少ししか一緒にいれないそうです~。でも、その少しの間は、とても楽しいらしいんですけどね~」
少し悲しそうに呟くムウ。
「・・・・やっぱり、か」
「どうしました?いつもは強気なのに、なんだか僕の方が影が濃いような気がします」
なんだか切なそうに顔を歪めるアカイトに、真の傍観組のミドリがたずねる。
「・・・・・昔、そこでプロポーズしたやつがいたんだ」
ぽつんと語り出される事実の欠片。それは、甘くもあり、苦くもあった。まるでビターチョコレートみたいに。
「・・・相手は、やつのマスターでもあり、俺のマスターでもある人だった。その人は、やつからプロポーズされて、・・・・OKしたんだよな、なんでかな」
「まさか・・・」
モコが思わず呟きかける。
「そうだよ、だからかな。少しして、その人は自分の世界で、新たな相手を見つけたんだ」
「・・・・・」
「そのこと知って、やつは反論してたんだけどなー・・・。やつはその人とは一緒の世界にいれないと知ってからは、手の平を返したかのように、その人を応援し始めたんだ。・・・この話も、十分悲しいが、あと1つある」
「・・・なんですか?」
誰もが口を開けるような気分ではないので、代わりにマツキが先を促す。
「・・・・・・・それは、俺とミクのことだ」
「・・・アカイト」
「・・・アカイトにゃん」
アカイトの言葉に、バンとミンがはもる。
「俺は、花火に告白を託してたから関係ないんだが。・・・俺、今年で22歳だろ?なんか早いような気がするけど、そろそろ、・・・その、・・・結婚のことも、現実的に考え始めてな・・・。それで、その『プロポーズ』をどこでしようかと思って・・・・・・」
「・・・カフェ・カフェにしたんですね」
もう誰も何も言えない雰囲気なので、マツキがこの場にいる全員を代表して言った。
「まさかの・・・、・・・・」
「・・・それで、今ミクさんは・・・?!」
モコが聞く。・・・その顔は怒っているような泣いているような表情をしていた。
「・・・・分からないんだ。朝起きたら姿がなかった。・・・まるで、朝日に溶けていくみたいにな」
「・・・・・・あの」
ジミが口を開く。
「それなら、あのカフェ・カフェで、ここに来る時にミクさん見かけましたけど・・・」
「えっ」
「ほ、ほんとかっ!?」
ジミの一言は、みんなを驚かすに十分過ぎた。
「はい。緑色の綺麗な髪をしてて、やっぱり可愛いなーって思いながらそこを通り過ぎたんです」
「ま、まじか・・・」
アカイトは驚き過ぎて、冷静さを取り戻していた。
「じゃあ、行きますか~?案内お願いします~、ムウさ~ん♪」
ふわふわなフワが空気を読んで言った。
「そうだな。案内お願いする、ムウ」
バンも、空気を読んでムウに言う。
「かしこ、まりました~」
「・・・なんか区切るとこ可笑しいだろ」
「グルト、お前に座を譲るぜ」
グルトの言葉に、アカイトは苦笑いして言ったのだった。
というようなことがあって、現在。
バンの研究所から20分歩いたところに、その喫茶店は存在していた。
名前は『カフェ・カフェ』という、綺麗な煉瓦作りで町並みに彩りを与える建築物だ。
カランコロンカランコロン、と鳴る鈴の音を聴きながらドアを開けると、店内は落ち着いた色調に纏め上げられており、誰もがほっと一息つける、いわゆる隠れ家的な名所になっている。そして・・・。
「ようこそ、『カフェ・カフェ』へ!」
この喫茶店の看板娘に定評のある巡音ルカが働いていることも、この喫茶店を語る上で欠かせない。ピンク系の長い髪に、仕事の時には集中するために眼鏡をかけている。決して、目が悪いということではないとのことだった。
「久しぶりだなー、ルカ」
「あー、アカイトさん!あれから何年も経って、すっかり大人びちゃって・・・。それで、今日はレンくんいないの?」
アカイトの姿を見ると、クールな外装から一転、一気に親しみやすいキャラに変ずるルカ。
「あいにくレンはいないんだよな・・・。・・・それで、ミク、・・・いる?」
返事を聞きたくなくて、思わず単語を1つ1つ区切って言ってしまうアカイト。
「いるよー・・・今日も元気にヤケ食い中だ」
そう言って、ため息をつくルカ。
「もう、今までどこほっつき歩いてたのよ?ちょうど去年からああいう感じなんだから・・・」
「・・・ごめん、ルカ」
「私じゃなくて、ちゃんと本人に言いなさい。ミクちゃん、絶対待ってるんだから」
そう言ってアカイトをせかすルカ。
「・・・・・すいませんけど、一体何人いるんですか?よろしければ、別席でモニタリング・・・は出来ませんけど、別席で何か飲み物でも、どうです?・・・もう少し色々言いたいことがあるので」
アカイトを向こうの席の方に追いやった後、残ったメンバーにルカは提案する。
「・・・そうだな、私たちは別室でゆっくりとしているから、行けばいい、アカイト」
バンは、優しげな表情でアカイトに言う。
「バン・・・」
「私とアカイトじゃ、だめだろ?アカイトがいいのなら、私は寂しくははい。・・・もう、独りじゃないからな」
そう言って、みんなを見回すバン。
「・・・分かった。ごめん、・・・バン」
「だから、その言葉は、本人に言ってやったらどうだ?」
「がんばれにゃおん?アカイトにゃんも、時にはがんばれにゃんよー」
ミンは、嫌味ったらしく言うも、心の中ではそうでもなさそうだった。
「・・・・ミン、お前って、やっぱ猫よりも猫に似てるぜ」
それが伝わってきて、アカイトは口調はぶっきらぼうに、でもそれなりに心のこもった言葉を言う。
「・・・たまにはアカイトも、良いこと言うにゃん?」
余裕ありげに、でも心なしか嬉しそうにミンは言った。
「だろ?でも、時々だけどな」
アカイトはそう言って、覚悟がまとまったのか、ミクがいるところへと、歩いていったのだった。
「・・・・・・・・」
なんだか複雑そうに顔を歪めているモコに、
「・・・モコちゃん、私と一緒に散歩しませんか~?」
ムウが声をかけて、
「じゃあ、ちょっとモコちゃんとデートしてきますね~~♪」
半ば強引に、ムウはモコを連れて、外に出たのだった。
「・・・・なんか、今後の展開が気になるよね!」
二人を見送っていたナエルは呟いた。
「私も、新参者ですが、そう思います」
ひょっこりとリアも賛同する。
「あの二人、特に、ムウさんが危ないですよね」
「お、リアちゃんも、なかなかの推理力だよね!」
「・・・・大丈夫だよ。・・・多分」
議論で白熱しそうになるナエルとリアに、レトは呟いた。
「・・・はぁ、アカイトってば、ひどいよ。今日も、探しに来てくれないなんて・・・」
そんな懐かしい声を、個室のドア越しに聞いて、俺は緊張を隠せなかった。
そういえば、あれから何年たっただろう。確か、去年からか。
あまり時間は経ってないのに、なぜか懐かしさを感じてしまう。
・・・それはきっと、あまりに思い出が濃い過ぎたからか。
「はぁ~。・・・そこにいるの、ルカちゃん?それとも、・・・・・アカイト・・・?」
今にも泣きそうな声に、俺は切なくなった。・・・俺は、一つ深呼吸してから、
「・・・・迎えに来たぜ、・・・ミ「うわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっっ!!!」
台詞を最後まで言えないままに、俺はミクに抱きつかれた。
「ミク・・・最後まで言えさせろよ。・・・・遅くなって、ほんとごめん・・・ミク」
俺は不平を言いつつも、一番言いたかったことを言った。
「・・・あいたかった・・・・・・・・・アカイト」
ミクが俺と目線を合わせる。・・・ミクの顔は、
「・・・・・あれ?泣いてないのか。こんな感動的な場面だから、てっきり泣くと思ってたんだが・・・・」
「・・・あのね、普段から泣いてるから、肝心なとこで涙が出ないの。・・・・・ほんと、アカイトは緊張感全然ないんだから・・・・」
呆れつつも、嬉しそうに顔を綻ばせて言うミク。
・・・時間も経って、すっかり大人びたようにも思える。
俺が19歳の頃、ミクは16歳だったから、今は・・・19歳か。
「あれから、大人になったんだな」
「そうよー、今じゃ立派に仕事もやっているもん。・・・アカイト、今まで何してたの?今日も今まで、ずーーっと考えてたんだから」
「・・・・まぁ、ちょっとな」
まさか連れ去られていたとは、口が裂けても言えまい。
しかも、その人と婚約していたとは、たとえ世界が滅亡しそうになっても、言えない。言えるはずが無い。
「・・・今日から、よろしくな。そういえば、カイトはどうしてるんだ?」
「・・・・・今日も、マスターが帰ってくるの、ずーっと待ってる」
少し切なそうに呟くミク。
「・・・・まだ、待ってるのか」
「・・・・・」
「・・・カイトのところに、顔出すか。ちょっと一言文句言わなきゃな」
「・・・・私は、行かない。こういうのは、アカイトがいいと思うから・・・ね?」
「・・・じゃ、明日にでも行って来るからな。・・・ところで、ミクこそ今まで何してたんだ?」
「私は、リンちゃんとかレンくんとかルカちゃんとかと一緒に過ごしてた。なかなか楽しかったよ」
「・・・・・そうか。なら、良かった」
「で、これからどうするの?」
「あ、俺の家まだあったな。じゃ、そこで・・・」
俺はそこで言葉を切って、それから、
「・・・一緒に、暮らさないか?」
おずおずと呟かれたその言葉に、
「・・・うんっ!」
ミクは嬉しそうに、頷いたのだった。
夕方、様々な騒動が起きたが、それはまた番外編の時にでも。
【コラボ】 新たな姉弟登場と嵐のような恋愛模様を2人であとはいつもの騒動をみんなで 【亜種】
こんばんは!最近妙に多いコメントや返事に嬉しさを隠せないもごもご犬ですこんにちは!
今回は、以前言っていた新たな2人のマスターである、鴉裏守(はせをP)さんより嬉しい返事を頂きましたので、前回の続きに色々付け加えて投稿しました!!鴉裏守(はせをP)さん、ありがとうございます!><
さて、内容の方を少し。
今回は、私が創成期に書き始めて今は放置してしまっている日常的環和という小説のその後も、少し取り入れました!なんか、話の流れ的に(笑)
これを機に、そちらの方も読んで下さればなと思います^^
ちなみに、カフェ・カフェという喫茶店の名前がかぶっていた場合は、お知らせして頂ければ名前を別のに変えたいと思いますので、もしかぶっていたりしていた場合は、教えて頂けると嬉しいです!
それでは、失礼しましたー!><
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眠りの先のカレイドスコープ
君が姿見 覗いてみれば
光の向こうの億年 見据えて
限りなく進む夢々とこれから
廻りながら感じて内宇宙...天体スコープ
Re:sui
廃墟の国のアリス
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BPM=156
作詞作編曲:まふまふ
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