朝起きて顔洗う時洗顔フォームと歯磨き粉を間違えました。服を着替えたらボタンを掛け違えました。朝食の時醤油とタバスコを間違えました。何故か自動ドアに激突しました。羽鉦さんがとうとう呆れて言いました。
「今日変だよ。」
「判ってます…。」
昨日の言葉がずっとずーっとぐるぐる回って殆ど眠っていませんから、なんて言ったら怒られるだろうか?むしろ笑うか呆れるかするだろうな。だけどごめんなさい、やっぱり私は奏先生が好きになっちゃいました。
「原因は騎士?」
「なっ…!ち、違!全然!や、ホラ、だって食べられちゃうって…!
あ、えーと、えーと…!」
「食べないから落ち着いて。はい深呼吸。」
言われるがまま準備体操の様に深呼吸をした。息が上手く吸えていなかったみたいだ。…そんな事無いか。私の様子を見ている羽鉦さんはいつも道理のニコニコ笑顔。だけど気のせいかな?少し曇っている気がするのは。
「ふぅ…すみません…。」
「少し、良いかな?話があるんだ。」
促されて連れて来られたのは最上階のあの広い部屋だった。羽鉦さんは入り口に居たスーツの人に何やら耳打ちするとスーツの人は頷いて部屋を後にした。
「わざわざごめんね。だけどどうしても伝えたい事があったから。」
「はい…。」
「俺が言って良い事ではないんだけど…騎士を一人にしないでやってくれる?
短い時間でも良いから、側に居て、騎士の話を聞いて、あいつを少しでも
守って、助けてやって欲しい。」
「守る…?私が…?」
意外だった。てっきり何か牽制とか忠告とかされると思ってたから。けど私を見る羽鉦さんは真剣で、そして凄く寂しそうだった。あの時の奏先生と同じ瞳…。何だろう?胸の辺りが不安で締め付けられる。伺う様にじっとこちらを見詰める羽鉦さんに気付き、私はコクリと頷きで返事をして言葉を紡いだ。
「側に居ます…ううん、側に居たい…先生と一緒に居たいです。」
「そっか。」
「…羽鉦さん?」
泣き出しそうに見えた。辛くて辛くて、その悲しみを笑顔で飲み込んでるみたいだった。あ、同じだ、この顔。私がBSになったと告げに来た両親の顔…。
『俺は…守ってやれなかった…。』
両親…?
『俺のせいだ…俺が…俺があんな事言ったから!』
違う…?
『側に居て…一人にしないで。』
―――誰…?
ふっと目の前が真っ暗になった。薄れる意識の中、声が聞こえた気がした。
『―――嘘吐き。』
BeastSyndrome -15.飲み込んだ言葉-
※次ページはネタバレ用ですので今は見ない事をオススメします。
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